注視すべき米軍撤退と残留部隊の動向
同じシーア派でありながら利権を失うことを恐れるマリキ元首相らがサドル師の動きを封じ込めようと画策しているとの情報もある。イランの関与は不明だが、親イラン派の選挙敗北を「戦略的な後退」として深刻に受け止めていることは確実だろう。
カディミ首相が新しい議会で再任されるか否かも予断を許さない。だが、こうした絡み合った政治状況の中で、サドル師の発言に動揺した勢力が武装組織と連携してドローンを飛ばし、首相にサドル師に迎合せず、同師の動きを抑えるよう警告を発したのかもしれない。
カディミ首相暗殺未遂事件はIS壊滅後のイラクがなお、治安が安定せず、平和がほど遠いものであることを示す結果となった。イラクには米兵約2500人が残っているが、戦闘任務は年末までに終了し、イラク軍の訓練部隊が残留する予定だ。米軍はこれら残留部隊がISの復活阻止のためには必要との立場だが、サドル師の言動によっては、完全撤退要求が強まる可能性がある。