糸くずを乾燥させて生皮苧(きびそ)とし、ボディタオルを製作するアイデアを出した。作業所もそれに乗ったのだが、きびそは通常の織り機にかけられない。板野代表はオンライン会議で相談に乗り、動画も活用しながら自らが代理店も務める特別な織り機の導入を支援していった。
目の前の仕事に向き合う姿勢
「絹が好きだというだけで走ってきたら、こういうことになるんだな、と感じております」と板野代表は語る。現在は、ファッションデザイナーが手掛ける草木染めにも関わる。「またコロナの感染拡大の波は来るかなと恐れる部分もあるが、良いと思ってくれる人がいて、何かしら仕事は見つかると思っています」と話す。
先を見通せない状況は続き、向かい風にあらがうことはもちろん難しく、追い風に乗ることも容易でない。ただ、板野代表が言う、好きなことをひたむきにやっていく、与えられた仕事にしっかり向き合う、といった姿勢は大事なのだろう。そうすれば、厳しい環境でも社会が報いてくれる時はきっと来る。
月刊誌『Wedge』の人気連載「溝口敦のさらばリーマン」の過去の記事はWedge Online Premiumでも読むことができます。