2022年12月8日(木)

スポーツ名著から読む現代史

2022年2月12日

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中島章隆 (なかじま・ふみたか)

元毎日新聞運動部長・論説委員

なかじま・ふみたか 1952年長野県生まれ。元毎日新聞運動部長・論説委員。現在は立教大講師、東京プロ野球記者OBクラブ理事。月刊政策情報誌「毎日フォーラム」で2009年から「スポーツを読む」を連載している。

ビッグボス新庄は「人」を残せるか

 「財を残すは下、事業を残すは中、人を残すは上」。関東大震災後の東京の復興などに尽力した後藤新平の残した言葉とされるが、野村は多くの著書でこの言葉を引用している。「自分は人を残した」という野村の自負の現れだろう。

 確かに、ヤクルトスワローズ監督時代の教え子である稲葉篤紀は侍ジャパンを指揮して2021年の東京五輪で金メダルに輝き、高津臣吾は同年、20年ぶりにヤクルトを日本一に導いた。ほかにもヤクルト時代のエース、石井一久は東北楽天ゴールデンイーグルスの監督をつとめ、埼玉西武ライオンズ監督の辻発彦はヤクルトで野村の薫陶を受けた。阪神タイガース監督の矢野燿大も野村が阪神監督時代に鍛えられた。

 今年は新たに、新庄が「野村門下生」として監督に就任した。2人とも「門下生」とは思っていないだろうが。

 2023年に日本ハムの新しい本拠地球場が完成する。球団にファンの目を向けさせ、新球場に行ってみたいというファンを増やさなければならない。球団フロントは、現役時代からさまざまな趣向を凝らし、ファンを喜ばせてきた新庄を、新球場という「器」にふさわしいリーダーと判断したのだろう。「監督の器」より「器の監督」を優先したということかもしれない。

 昨年11月、札幌市内のホテルで監督就任会見を開いた新庄は、いきなり「優勝なんか、一切目指しません」と新庄節を炸裂させた。今年2月1日の沖縄・名護キャンプ初日にはド派手な三輪バイクで球場入りするなど話題作りは日本のスポーツ界随一といえる。

 ビッグボスが率いる新生・日本ハムが日本のプロ野球に新しい風を送りこむか。野村も天上から苦々しい顔で見守っているに違いない。(文中敬称略)

  
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