とはいえ、パチンコ業界にはまだまだカネが有り余っている。メーカーでいえば、12年に年間を通じて最も売れたパチンコ台は、三洋物産の「CR大海物語2」で約25万台。続いて、京楽産業の「CRぱちんこAKB48」の約20万台である。パチンコの新台は1台あたり40万円前後でホールへ販売されるのが一般的であるため、1台40万円で計算すると、「CR大海物語2」は約1000億円、「CRぱちんこAKB48」は約800億円である。帝国データバンクによると、12年末時点で、製造業で年商1000億円以上の規模を誇る企業は454社しか存在しない。ヒットさえすれば、1機種1000億円を売り上げてしまうのがパチンコメーカーの恐ろしさである。
パチンコホールに目を移しても、業界最大手マルハンの12年3月期売上高は2兆718億円となり4年連続で2兆円を突破した。当期純利益も238億円を確保している。第2位のダイナムを傘下に持つダイナムジャパンホールディングスは、12年8月に香港証券取引所へ上場を果たし、約160億円を市場から調達した。12年のパチンコ販売台数は約248万台。ピーク時の350万台という販売台数からすると、危機的状況にも見えるのだが、業界内でも淘汰が進んでおり、生き残った業者は大手企業を中心としてまだまだ勢いはあるといえる。
平和は11年12月にPGMをTOB(株式公開買付)により連結子会社化したが、実はゴルフ場経営を手掛けるのは2度目である。
前回は94年だった。当時の子会社である平和ローランドが世界的コースデザイナー加藤俊輔氏を擁して群馬県に「平和ローランドゴルフ倶楽部」をオープンさせた。しかし、ゴルフ場運営のノウハウがなかったパチンコメーカーには、そのコースを支えるだけの手腕はなかった。パチンコ関係者以外の利用客が伸び悩んだことなどにより、99年に子会社の株式とゴルフ場諸施設を平和の創業者であり、当時の大株主であった中島健吉氏へ売却した過去がある。
「PGM買収時に平和の大株主であった石原昌幸氏が、『カネは出すがクチは出さない』と確約したため、現社長の神田有宏氏は経営を引き受けた」(業界関係者)そうだ。
平和は過去の失敗を踏まえ、パチンコ業界以外から人材を登用することにした。実際、PGMには平和側から管理部門の社員が数人程度出向しているだけで、人材交流はほとんどない。石原氏は平和従業員に「パチンコもゴルフも時間を消費させることによって報酬を受け取るビジネスモデルとして共通するところが多い。パチンコ業界が縮小傾向の中、2つ目の事業の柱を創り出さなければならない」と説明しており、パチンコ事業とは一線を画す方針だ。
異業種に進出しているのは平和だけでない。セガサミーホールディングスは、12年2月にRHJインターナショナルが保有する「フェニックス・シーガイア・リゾート」(宮崎県宮崎市)運営会社の全株式を取得し、子会社化することについてRHJインターナショナルと合意し、株式譲渡契約書を締結、3月に子会社化した。セガサミーはこの買収によって複合レジャー施設を運営し、時間に余裕のある団塊世代への長期滞在型サービス提供を模索する。