しかし、こんな声もある。「4億円という破格の株式取得価格に飛びついたようでした」あるセガサミー社員は当時をそう振り返る。フェニックスリゾートに対する借入返済目的で、約54億円の貸し付けを同時に行っているが、合計しても60億円にも届かない。複合レジャー施設の運営ノウハウの蓄積こそ目的の一つだったことは確かだが、「上層部としては、買収してから考えるということだったのですが、買収から1年が経とうとしているにも関わらず、目新しい動きはありません」(前出の社員)というのが現状のようだ。
そうした状況の中、13年に入ってからも、韓国の釜山広域市が実施した複合レジャー都市「センタムシティ」開発計画に公募入札し、落札している。ここでもまたノウハウの吸収を狙う。
実はセガサミーにも、過去ゴルフ場経営に失敗した平和と同じく、カジノ構想を含む複合レジャー施設計画を実現させようとして失敗した過去がある。07年、横浜市のみなとみらい21地区で、当時の中田宏横浜市長と組んで大規模開発を計画した。しかし、リーマン・ショックや法律の壁など障害が次々と発生し、断念していたのだ。平和もセガサミーも“リベンジ”となるか注目だ。
まだまだ続く異業種荒らし
ノウハウはないが、資金だけは豊富にある、というパチンコ業界が、他の業界を荒らし回っていることについて、警戒感の広がりとともに問題視される向きが強まっている。たとえ黒いものでもトップが白と言えば白になるパチンコ業界の常識に変わりがないということも問題だ。
パチンコ業界は上場している企業が存在するとはいえ、まだまだ不明瞭な点が多い業界である。パチンコホールにおける換金行為は言うまでもなく違法であり、“三店方式”という仕組みを利用してグレーゾーンで営業をしているに過ぎない。
そうした組織に一般企業が飲み込まれることになるので、軋轢が生じるのは当たり前だ。セガサミーは、03年にパチンコメーカーのサミーがゲームメーカーのセガを買収して誕生したが、未だに、旧セガ社員の中には、旧サミーの企業体質に拒絶反応を示す人も少なくないそうだ。
冒頭で触れたように、平和傘下のPGMによる敵対的買収劇から身を守ったアコーディアも、13年3月期末の配当を前期末の1200円から5500円にまで引き上げざるを得ない状況になった。TOBは不成立に終わったものの、混乱に乗じて今年1月にアコーディア株を買い占めた村上世彰氏と関係の深い投資会社「レノ」との攻防を含めて、今後アコーディアに財務的な影響を与えることは必至だ。
マルハンが介護業界へ進出するという噂もあるように、平和、セガサミーのほかにも、異業種へ進出を目論むパチンコ関連企業は多い。なりふり構わぬパチンコ業界の行動に異業種が翻弄されるのは、まだまだこれからである。
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