避難勧告後、しばらくは牛の世話をしていたが、家族の説得に応じて故郷を離れて、避難区域が解除された6年前に戻ってきた。半谷さんは、松村さんのコメをみて「いいコメだ。本当は1等コメだ」と、うれしそうな表情をみせる。
突然聞いた仲間の〝決断〟
松村さんの田が実ったときに、知らせるとさっそくやってきたものだ。その時にこういった。
「毎日田んぼにきた。毎日伸びて、お盆になると実ってくる。それしか楽しみがなかった。命だ。コメは命だ」
コメを届けた、松村さんに半谷さんは突然いった。いま大根などを作っている畑を太陽光発電の会社に貸し出すというのである。
――牛をあきらめ、田んぼをあきらめ、最後に畑をあきらめた――
――故郷の時間は止まった。多くの人の暮らしも夢も断ち切られたのだ。だが、田んぼは生きていた――
松村さんは今春、秋に向けて再びコメ作りのために土起こしを始めた。
「カエルやタニシなどがどんどんでてくる。それが自然なんだ」
――100年を超え、1000年を超えて命を生み続けることだろう――
「自然は永遠に続いている。ちゃんとよくできている」
――もう一度、ここから始める――
(NHK+視聴可能:3月20日16:49まで)