2022年12月8日(木)

お花畑の農業論にモノ申す

2022年4月4日

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熊野孝文 (くまの・たかふみ)

元米穀新聞記者

1954年生まれ。東京経済大学中退後、コメの相場情報として米穀市況を速報する仕事に8年従事し、米穀新聞の記者として農家と卸売業者、小売店と、それぞれが取引する現場を40年取材してきた。近書に『ブランド米開発競争―美味いコメ作りの舞台裏』(中央公論新社)。

 こうした飼料用米増産政策の一環として飼料米多収コンテストが開催されている。多収穫を得るには栽培方法や品種選定が大きな要素を占めているが、中でも品種は重要だ。

 日本の稲の育種は過剰米時代に入ってから多収より食味重視に目標が移ったこともあって、多収穫米の育種研究は表舞台から遠ざかっていた。それが飼料用米制度が出来たことにより、飼料用専用品種の育種開発が進められ、主食用米に比べ大幅に収量の高い品種が次々に登場した。コンテストで農水大臣賞を受賞した生産者が栽培した品種も「べこあおば」と言う飼料用専用品種なのである。

復活が進められている「再生二期作」

 その多収穫米について、コメを「再生二期作」という栽培方法で多収しようという試みがある。

 再生二期作とは聞きなれない言葉だが、稲は一度刈り取った後に、切り株をそのまま放置しておくと、そこから再び穂が出て来て実を付けるという性質がある。この二番穂のことを「ひこばえ」と呼んだりする。漢字では「蘖」という難しい字だが、今ではコメ業界関係者でも知らない人が多い。

 それは昭和40年代後半からコメ余りの時代を迎え、わざわざ二番穂を収穫する必要が無くなったことにある。二番穂を収穫しようという農家はほとんどいなくなったが、試験場レベルでは研究が続けられていた。

 農研機構九州沖縄農業研究センターは2年前に水稲再生二期作栽培方法で10アール当たり1.5トンと言う飛躍的に高い収量が得られると発表した。農研機構が試験場レベルで栽培している飼料用多収穫米でも最高収量は1053キログラムなので、約1.5倍多い。

 九州沖縄農業研究センターによると、九州は春や秋の気温が高く、水稲の生育期間が長いこともあり、収穫後の秋になっても二番穂(いわゆるひこばえ)が発生する。こうした気象条件を生かし、栽培や収穫方法を工夫することにより、同じ圃場で年2回収穫、単位当たりの収量性を高めた。

 同研究センター水田作研究領域の中野洋チーム長は、品種を多収性品種のべこあおばと北陸193号を交配した雑種一代とし、4月に田植えして1回目を8月に収穫、2回目を11月に収穫した。栽培、収穫のポイントは、肥料を1週間ごとに投入(10アール当たり37キログラム)するという多肥と、収穫の際に地上から50センチの高さで刈り取ること。切り株を多く残すことは非構造炭水化物を残すことで、これによって二番穂の籾数が減少しなかったという。また、1回目の刈取り時期も重要で、早く刈った稲では二番穂の収量が10アール当たり430キログラムあったという。

 農研機構では、地球温暖化で春や秋の気温が上昇しており、生育期間が一層長くなると予想されることから、再生二期作により単位当たりの収量性を上げ、低コスト栽培することで加工用米や業務用米生産に貢献できるとしている。

東北の地でも始まる実証テスト

 この再生二期作栽培方法によって加工用米や業務用米ではなく、バイオプラスチックの原料になるコメを生産しようという試みが今年、福島県浪江町で始まる。

 実施主体は、バイオマス資源を利用したプラスチック樹脂原料の製造・販売および研究開発を担うバイオマスレジンホールディングスのグループ会社で、コメ作りのために昨年設立されたスマートアグリ・リレーションズ(福島県双葉郡浪江町、中谷地美昭社長)である。

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