2022年12月4日(日)

お花畑の農業論にモノ申す

2022年4月4日

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熊野孝文 (くまの・たかふみ)

元米穀新聞記者

1954年生まれ。東京経済大学中退後、コメの相場情報として米穀市況を速報する仕事に8年従事し、米穀新聞の記者として農家と卸売業者、小売店と、それぞれが取引する現場を40年取材してきた。近書に『ブランド米開発競争―美味いコメ作りの舞台裏』(中央公論新社)。

 同社は昨年、浪江町の水田4ヘクタールでコメ作りを行い、30トン生産した。今年は一気に50ヘクタールに面積を拡大。その中で低コスト稲作の一つの手段として再生稲の実証栽培テストを行う。

再生稲の実証栽培のバイオマスレジン福島の作付予定地(バイオマスレジンホールディングス提供)

 使用用途がプラスチックの原料になるバイオマスレジン生産のため、「収量を最大限アップする」ことを最大の目標にしている。このため低コスト栽培方法として再生稲栽培だけでなくドローンによる直播(じかまき)など最新の栽培技術を取り入れる計画を立てている。

 「生産性や効率化を考えると年2回穫れた方が良い」と言う中谷地社長の判断でこの実証テストをはじめることにした。具体的には最初に植えた稲を収穫する際、株を20センチから30センチ残し、それに二番穂が実るようにして11月に刈取り作業を行うことを考えている。

 ただ、ここで問題になるのは、福島県は九州のような温暖な産地ではないため、果たして二番穂が実るだけの気象条件が得られるかという点にある。農研機構九州沖縄農業研究センターの中野洋グループ長補佐は、「ハードルは高いがチェレンジしたい」と、取組に協力している。

耕作放棄地の有効活用も視野に

 この再生二期作の実証テストが注目される理由は、単に新たな栽培方法で単位面積当たりの収量を高めることだけに留まらず「耕作放棄地で工業用の原料米を生産する」ことにある。

 日本のコメ作りは1972年から続く減反政策で、本来最も重要な多収栽培の技術が衰退したことに加え、耕作放棄地が増え、生産者の高齢化で離農者も急増、生産基盤そのものが急激に弱体化している。このままでは自給率向上どころか国民が必要とする食糧が賄えないという事態も想定される。

 中野グループ長補佐は「中国では再生二期作が20万ヘクタール規模に拡大している」と指摘しており、自国の穀物生産の向上は国家的な課題になっている。はからずもウクライナ情勢で世界的に穀物価格が上昇、日本でも4月から小麦の価格が17%も値上げされるという事態になっている。さらに円安が進み、海外から安い食料を買えば良いという状況ではなくなりつつある。

 わが国の水田は、稲作が日本に伝播して以来、先人が営々として築き上げたかけがえのない資源であり、そのことは各地にある棚田の景観を見れば容易に想像できる。その水田の有効活用は今日の世界情勢を見れば最も重要な課題と言える。

 そこに新たな需要としてバイオプラスチックが生まれた。バイオマスレジンホールディングスはライスレジンからさらに進化した生分解性プラスチックの研究・開発も進めており、その商品名は「ネオリザ」と名付けられている。

 この商品は自然界に存在する微生物の働きにより、土に返せば二酸化炭素(CO₂)と水に完全に分解されるというもので、海洋汚染問題を解決できる究極のバイオマスプラスチックである。同社の説明によると、ライスレジンは複合性の素材であり生分解はしないが、ネオリザはバクテリア等の働きのより土の中で完全に分解するため農業用マルチフイルムにも使えるほか、釣り糸や漁網使えるという。製造方法は公表されていないが、ネオリザが全てコメで出来るようになれば、その需要は計り知れない。

 コメの用途として主食用や食品加工原料だけでなくこうした工業用原料にも使えることは新たな用途として需要拡大に貢献できる。かつ食味を追求する必要がないためその分栽培がしやすく耕作放棄地の有効活用に繋がる。

  
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