繰り広げられる駆け引き
葛城警部(玉木)は、未知留の心が揺らいでいるところに付け入って、警察に協力させようと、彼女の元恋人でもある三輪(賀来)に頼み込む。
三輪は海岸近くの駐車場に未知留を呼び出して、説得し、近くに止まっていた警察のワンボックスカーに誘導して、葛城(玉木)に会わせて協力させる形を作った。
温人と未知留の自宅に、彼女のPTA仲間を装った女性捜査官を送り込んだ。胸につけたブローチに隠しカメラとマイクを仕込んでいた。
犯人からの連絡が、温人のスマートフォンに入る。
「警察は全部排除したようですね」と尋ねる犯人に、温人は答える。
「いや、もうひとりを排除するところだ」
さらに、女性捜査官に向かって「盗撮と盗聴は違法ですね。葛城さん、この人を外にでるようにいってください」と、隠しカメラの先にいる葛城に呼びかける。そして、スマートフォンでつながっている犯人に「わたしたち夫婦が出たネットニュースを見てください」と。
そこには、近くの家から温人の動向を見張っている捜査陣が入っている、近くの住宅の部屋が映し出されていた。撮影しているのは、元刑事の東堂(濱田)だった。
そして、警察に協力したはずの弁護士の三輪(賀来)も登場した。
「この部屋の大家さんの『退去命令』です。これに逆らって居残ると多額の賠償金ばかりではなく、国家賠償責任も問えますよ。仮に今回の誘拐事件が解決できなかったら、それは警察の責任です。鳴沢(温人)家の顧問弁護士として警告します。娘を失ったら、鳴沢夫妻はなんでもしますよ。警察を訴えもするでしょう」と。
温人は、葛城(玉木)を自宅に呼び寄せて、つながっている犯人に聞こえるように、次のように彼に誓わせるのだった。
「警察は誘拐捜査から手を引く。身代金の引き渡しに介入しない」と。
犯人に温人はいう。「娘の声を聞かせてくれ。妻が壊れそうなんだ。そうしたら、身代金の引き渡しにも支障がでるかもしれない」。犯人はようやく、娘の声を聞かせる。ご飯を食べているかを聞いた、未知留の質問に「お菓子ばかり。ママのご飯が食べたい」と。
誘拐事件の解決したのちには、仮面夫婦と娘との家族の再生の物語が待っているような気がするが、どうか。脚本の黒岩勉はそんなありきたりのドラマの結末を裏切ってくれるのかもしれない。