田部康喜のTV読本

2022年4月22日

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田部康喜 (たべ・こうき)

コラムニスト

福島県会津若松市生まれ。幼少時代から大学卒業まで、仙台市で暮らす。朝日新聞記者、朝日ジャーナル編集部員、論説委員などを経て、ソフトバンク広報室長に就任。社内ベンチャーで電子配信会社を設立、取締役会長。2012年春に独立、シンクタンク代表。2015年10月から東日本国際大学客員教授として地域振興政策を研究、同大・地域振興戦略研究所副所長を兼務。

 「マイファミリミー」(TBS日曜劇場)は、オンラインゲームの社長・鳴沢温人(なるさわ・はると、二宮和也)と、妻の未知留(みちる、多部未華子)が、娘・友果(大島美優)を誘拐した犯人の要求を受け入れて、完全に警察を排除して事件の解決に挑む、斬新な物語である。

(howtogoto/gettyimages)

 夫の温人(二宮)が仕事に没頭するあまり、家庭を顧みなかったことから、妻の未知留(多部)の心は離れ、仮面夫婦の状態である。そこに、誘拐事件は起きた。

過去の傑作を意識か

 脚本は黒岩勉。「モンテ・クリスト伯」(フジテレビ・2018年)や「アンサング・シンデレラ 病院薬剤師の処方箋」(同・20年)、映画では「累―かさね―」(佐藤祐市監督・18年)などで知られる。

 今回のドラマでも、サスペンスタッチの映像を重ねていく物語は魅せる。脚本家はつねに、あるジャンルを執筆するとき、過去の傑作を意識する。映画「天国と地獄」(黒沢明監督・1963年)や、ドラマ(NHK・2015年)と映画(瀬々敬久監督・16年)になった「64」は、当然意識しただろう。誘拐事件の捜査陣が、神奈川県警であるのは、「天国と地獄」と同じである。黒沢監督に対するオマージュ(敬意)を感じる。

 誘拐された子どもが身代金と引き換えに戻ったとき、「天国と地獄」の主任刑事の仲代達也が部下たちに放った言葉は、耳に残る。

 「さあ、犬になって、犯人を追うぞ」

 警察が足と知恵を使って、犯人を追い詰める――。そんな誘拐の物語の「常識」を覆した、黒岩勉の脚本は見事だ。さらに、事件の解決に向かって、複数の伏線が張られている。それが、どのように誘拐に絡んでいくのか。ドラマの滑り出しは飽きさせない。

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