ヒッティングのパワーとスイングスピードは日本プロ野球の打者の中でも群を抜くレベルで、それゆえにMLBの主力投手たちがストロングポイントとするムービングファストボールへの対応も十分に可能。ボールへの反応速度も速く、空振りやミスショットが少ない。外野の守備力はトップレベルで強肩を兼ね備えており、加えてスピードと常に次の塁を狙う意識が高く走力も申し分なし――。
昨年夏、広島時代の鈴木を追い続けていたMLBア・リーグ某球団の極東スカウトからベースボールオペレーションとスカウティングリポートに基づくセイヤ・スズキ評について、このように激賞する内容を耳にしたことがあった。このスカウト曰く「カブスもほぼ同じような内容でリポートし、評価していたはずだ」という。
走攻守だけでない注目されている「MAKE UP」
「日本の5ツールプレーヤー」と目されていた前評判通り、その能力を早々と存分に発揮して鈴木選手は最高のロケットスタートを切った。事前に入念な調査を行った末、日本人野手最高額となる5年総額8500万ドル(約109億2000万円)のビッグディールを締結して鈴木を迎え入れたカブス編成本部長のジェド・ホイヤー氏が「われわれは間違っていなかった」と口にし、胸を張ったのも当然のことだろう。今や数々の名だたる米主要メディアもカブスの鈴木獲得に関し「最高の補強」(シカゴ・トリビューン紙)、「仮に10年契約を結んでいたとしても賞賛されていた」(ESPN)と評するなど絶賛の嵐が起こっているほどだ。
ただ、鈴木選手が開幕から快進撃を見せ、神速とも言える形でメジャーにフィットしているのは「5ツールプレーヤー」としての類まれな能力が兼ね備わっている点だけではない。実を言えばホイヤー氏を筆頭にカブス側が鈴木に高い評価を与えているのは走攻守で際立つ数値を誇っていることに加え、選手獲得の際に重要視される「MAKE UP(性格)」の項目が非常に優れているところだという。
広島で主砲、4番として長きにわたり、チームのまとめ役となっていた。昨季はチーム内でキャプテン制が復活し、野手キャプテンに就任。カープのラストイヤーとなった中、自身の言動がチームメートに大きな影響を与え、野手だけでなく、投手も鈴木選手に歩み寄って助言を求めるシーンが何度も見られた。ホイヤー氏も「われわれはセイヤがNPB時代にリーダーとしてチームメートから強い信頼を得ながら素晴らしいプレーを見せ続けてきたことを調査し、知っていた。これは彼を獲得する上でわれわれにとって非常に重要な要素だった」とも明かしている。
こうしたカブス側の見立ては「正解」だったようだ。決して英語は完璧ではないものの、鈴木選手は松下登威通訳の助けも得ながらチームメートと抜群のコミュニケーションを築き上げている。
開幕早々、カブスのクラブハウスに持参した日本の菓子類を多数棚の上に置き「ご自由にどうぞ。日本のスナックです。フロム・セイヤ」とのメッセージも添えてチームメートたちを大感激させ、すっかりハートをつかみ取った。この和やかなエピソードは日米の各メディアで報じられ、鈴木選手が早くもチームに溶け込んでいる様子を物語っている。