フランスのオランド大統領は、欧州産品の競争力を維持するためユーロの価値を管理すべきであると述べたが、そのような誤った考えは混乱と報復を招くだけである。欧州経済を再活性化するためには、為替レートを変えるのではなく、緊縮策を止めるべきである。
ブラジルやメキシコのような途上国は、日米のような国で金融緩和策が取られると、通貨操作と同じ効果を生み、自国通貨が高くなると不満を述べているが、これらの国は為替を操作するのではなく、不安定な資本流入を規制することで自国を守ることが出来る。
欧州が不況、日本がデフレで、その上米国で自動歳出削減が実施され再び不況になりそうな状況にあり、世界経済は脆弱である。そのような世界で最も望ましくないのは通貨戦争である、とNYT社説で論じられています。
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G7財務大臣・中央銀行総裁会議で、円安をもたらしている日本の政策が批判されなかったのは、日本の政策は基本的にデフレ脱却を目的とした金融緩和策で、日本経済がデフレを脱却し、再活性化されることは世界が期待しているからです。それに、円安と言っても、上記WSJも指摘するように、円がリーマンショック以来ドル、ユーロに対し大幅に高くなっていたという状況下での円安傾向です。
上記の両社説とも、円安の進行に関しては安倍総理を批判せず、安倍総理は他国の例に倣ったに過ぎない、と言っています。
したがって、G7財務大臣・中央銀行総裁会議の声明が、安倍総理の政策を容認するような形になったからといって、それが直ちに通貨戦争に結び付くとは言えません。ただ欧州、米国とも、不況対策として財政に頼れず、大幅な金融緩和策の効果にも限度がある中で、オランド大統領のように、通貨切り下げに活路を見出そうとする動きが出てくる危険はあり、注視しなければならないでしょう。
なお、G7財務大臣・中央銀行総裁会議に続いてモスクワで開催されたG20財務省・中央銀行会議でも、アベノミクスは批判されませんでした。ただ、共同声明は、「通貨の競争的な切り下げを回避する」と明記し、通貨戦争を回避するという政治的意思は明確に示しました。
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