2022年7月1日(金)

21世紀の安全保障論

2022年5月1日

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谷 弘 (たに・ひろし)

1963年海上保安大卒、海上保安庁、運輸省、総理府、科学技術庁で勤務。1992年国際原子力機関(IAEA)査察情報処理部長就任、1997年日本原子力研究所理事を歴任。主な著作に『全面核実験禁止条約(CTBT)とその発効に向けた準備作業』(JAERI-Review)、『原子力船むつ計画から改役まで』(日本海事史学会誌)、『海洋開発技術ハンドブック』(共著:朝倉書店)等

戦時国際法で明確に禁止されている原子炉攻撃は、言語道断

 1949年のジュネーブ諸条約(ジュネーブ4条約)及びその改定追加議定書は、「武力紛争が生じた場合に、傷者、病者、難船者及び捕虜、これらの者の救済にあたる衛生要員及び宗教要員並びに文民を保護することによって、武力紛争による被害をできる限り軽減すること」を目的とした4条約の総称である。その中には、戦争中といえども行ってはならない「重大な違反行為」が定められており、その一つとして、「危険な力を内蔵する工作物等(ダム、堤防、原子力発電所)の保護」が定められており、「原子力発電所」は、ダム、堤防とともに、明確にその対象物である。この条約には、世界のほとんどの国が加盟しており、ロシアも加盟している。

 この条約の趣旨から、原子力施設への軍事行動のリスクは、今まで現実のものとして考えられないものであった。戦時といえども、守らなければならない戦時国際法として定められたジュネーブ条約を加盟国が破るということは普通では考えられない異常な行動である。そのため、国連やIAEAの会議で非難決議が出るのは当然の成り行きであるが、それに反対する国があることも驚きであった。

 今後は、ジュネーブ条約の遵守を再度真剣に確認すべきことが国際的重要課題となった。わが国もあらゆる機会を捕まえて、その実現に向けて努力することが、何より重要である。その為には、日本国民一人一人が、明確に意思表示し、政府の外交政策を支える必要がある。

 
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