2024年7月16日(火)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2022年5月18日

 その意味は、ウクライナの問題は欧州の問題であり、西側は勝手にアフガニスタンをタリバンに渡して出て行きながら、今更ウクライナを心配せよと言う立場にあるのかということであろう。彼の議論はこの論説が引用しているメノン(シン元首相の安全保障補佐官)の論文に通じるものがある。メノンはウクライナ戦争が世界秩序を作り替える訳ではない、欧州は地政学上のドラマの主要舞台であるアジアのサイドショーに過ぎないと論じる。

どちらつかずの構えは変わらない

 アジアは米国と中国との間に挟まってその身の処し方に苦労することに変化はなく、ロシアの封じ込めに精力を削がれる欧州にアジアのジレンマに意味のある役割は期待し得ず、そうであれば、アジアに問題の構図とその処方箋を提示するについては繊細さを要するはずだと論じているようである。

 このようなインドの頑固で斜めに構え批判を気にする様子もない姿勢はすぐには変わらないのであろう。中国に対する抑止の観点から、インドを「クアッド」にも招き入れることとなったが、主要な国際問題についていずれの側に立つかの選択を伝統的に嫌がるという意味でインド自体は変わってはいないのかも知れない。しかし、この姿勢に問題のあることは、この論文でタルールが余すところなく指摘している。

 ロシアが信頼に足るパートナーであり続けるのかとの基本的な疑問がある。選択を避ける贅沢を何時までも続けることも出来ないのではないかと思われる。タルールが指摘するように、そのことは他国に選択を求める時になって自身に跳ね返ることになるであろう。

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