インドから見た世界のリアル

2022年4月23日

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長尾 賢 (ながお・さとる)

米ハドソン研究所 研究員

学習院大学大学院にて博士号(政治学)取得。米戦略国際問題研究所(CSIS)客員研究員などを経て2017年から現職。日本戦略研究フォーラム上席研究員、スリランカ国家安全保障研究所上級研究員、未来工学研究所特別研究員なども兼任。著書に『検証 インドの軍事戦略』(ミネルヴァ書房)。

 インドが自衛隊機の着陸を拒否した。日本政府は、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の要請を受けて、ウクライナ難民のための毛布などの人道支援物資を、備蓄倉庫があるインドのムンバイとアラブ首長国連邦(UAE)のドバイから、自衛隊機を使って、ポーランドとルーマニアに運ぶ計画をたてていた。

3月に岸田文雄首相(左)が訪印し、モディ首相と会談していたにもかかわらず、今回の事態が起きた(ロイター/アフロ)

 インドは、外務省レベルで一旦了承したものの、その後、自衛隊機の着陸を拒否し、民間機で運ぶことを求めてきた。自衛隊機が上空を通過することは許可するとのことだったが、着陸して積み込むことは許可しなかったのである。

 本来なら、自衛隊機がインドに着陸して、人道支援物資を運ぶことには安全保障上の利点がある。平時から自衛隊とインド軍との間で、こうした協力関係が日常化すれば、手続きなどに慣れ、有事でもスムーズに支援しやすくなる。印中国境で、インドと中国が戦うことになれば、インドを支援する物資を、自衛隊機がインドに着陸して供給するかもしれない。

 しかも、インドが拒否したタイミングは、ちょうど自衛隊の統幕長が訪印する直前だ。統幕長は、4月25~27日にインドで行われる国際会議「ライシナ会議」で講演する。その直前に事件は起きたのである(ちなみにこの会議は、統幕長だけでなく、欧米からも欧州連合(EU)のフォンデアライエン議長をはじめ高官が参加し、ロシアからも政府高官が参加する、大きな国際会議である。筆者も、米国国防省の現職の高官、米リンゼー・フォード・南アジア・東南アジア担当国防次官補代理などと共に、日米豪印韓の日本代表としてディナーパーティの壇上に上がる。筆者は力量不足であるが、全力であたるだけである)。

 だから、このようないい話を、このようなタイミングで、インドが拒否したのは、なぜか。大きな疑問である。そこで、本稿では、2月24日にロシアがウクライナ侵攻をして以来、インドがどう行動してきたか、みて、その理由を探ってみることにした。

ロシアを非難しないインド

 2月24日以来、インドが示した来た姿勢の特徴は、インドがロシアを名指しで非難しないことである。国連安全保障理事会でも、国連総会でも、ロシアを非難する内容のものはすべて棄権している。

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