2022年7月5日(火)

インドから見た世界のリアル

2022年4月23日

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長尾 賢 (ながお・さとる)

米ハドソン研究所 研究員

学習院大学大学院にて博士号(政治学)取得。米戦略国際問題研究所(CSIS)客員研究員などを経て2017年から現職。日本戦略研究フォーラム上席研究員、スリランカ国家安全保障研究所上級研究員、未来工学研究所特別研究員なども兼任。著書に『検証 インドの軍事戦略』(ミネルヴァ書房)。

 ロシアに対する経済制裁にも参加していない。インドは、ウクライナのブチャなどで、ロシア兵による残虐行為が明らかになったときには、国連安全保障理事会でその行為を非難した。しかし、そこでも「ロシア」という言葉は使っていない。

 3月には、日米豪印「クアッド」オンライン首脳会談、訪印した岸田文雄首相との首脳会談、豪モリソン首相と印モディ首相のオンライン首脳会議があった。4月、米国のバイデン大統領は、インドのモディ首相とオンラインで首脳会談を行った。米国とインドは、外務・防衛の閣僚2人ずつが参加する「2プラス2」も開いた。しかし、そのどの会談においても、インドはロシアを非難していない。明らかに、ロシアに配慮した姿勢であった。

とにかく「中立」を意識した姿勢

 ただ、このインドの姿勢は、ロシアを支持している姿勢ともまた違ったものであった。その姿勢がよくわかるのは、中国の姿勢と比較した場合である。

 中国とインドは、両国とも国連安全保障理事会で、ロシア非難決議に棄権した国である。しかし、その後、両国の姿勢の違いはより鮮明になっている。それは、中国が、欧米の対ロシア経済制裁を非難しているのに対し、インドが欧米の経済制裁に対して沈黙を守っていることだ。

 3月24日に国連安全保障理事会において、ロシアが独自に提出した決議では、ロシアと中国が賛成したが、インドは棄権した。この決議では欧米諸国も棄権したから、欧米諸国とインドが珍しく同じ姿勢を示したものである。インドは、ウクライナや周辺国に薬や人道支援物資も送っている。

 つまり、ここから考えられるのは、インドが徹底的な中立を追求していることである。本来、インドはロシアとの協力関係が深い国であるから(「ロシアを非難する国連決議にインドが棄権した理由」)、ロシア支持になってもおかしくはないのである。それなのに徹底的に中立を貫くのは、インドもまた、今回のロシアの行動をよくないものとして捉えていることを示している。

 そこから考えると、今回のインドの自衛隊機拒否の姿勢は、インドの掲げる徹底的な中立の姿勢に引っかかる、ということだろう。インドから見れば、自衛隊機は軍用機であり、それが複数回、インド国内から物資をウクライナのために運ぶとなれば、これは中立ではない。そこで、民間機で実施するよう求めてきたものと思われる。

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