2022年7月5日(火)

インドから見た世界のリアル

2022年4月23日

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長尾 賢 (ながお・さとる)

米ハドソン研究所 研究員

学習院大学大学院にて博士号(政治学)取得。米戦略国際問題研究所(CSIS)客員研究員などを経て2017年から現職。日本戦略研究フォーラム上席研究員、スリランカ国家安全保障研究所上級研究員、未来工学研究所特別研究員なども兼任。著書に『検証 インドの軍事戦略』(ミネルヴァ書房)。

それでもインドとの関係改善に進むべき日本

 ただ、心配なのは、断られた日本側だ。断られれば、うれしいはずがない。今回のインドの自衛隊機着陸拒否は、日印関係を悪化させる可能性がある。それに、ロシアのウクライナ侵攻を受けた日本とインドの立場の違いは、この自衛隊機着陸拒否だけでなく、頻繁に取り上げられており、累積して関係を悪化させる可能性がある。

 筆者は、日印関係が、1998年のインドの核実験に対して日本が制裁をかけた時以来、最大の危機を迎える可能性を心配している。対応を誤れば、日印関係は、米ソ冷戦時代の日印関係ように、ほとんどお互いに無関心な状態まで戻ってしまうだろう。しかし、日本にとってそれでいいのか、ということは日本の国益という観点から、考える必要がある。

 日本は、中国対策として日米豪印クアッド、インド太平洋構想を進めてきた。それはインドなしには成り立たない構想である。

 日米豪だけであれば、米国の同盟国同士で話せばいいので、特にクアッドである必要はない。「アジア太平洋」のかわりに「インド太平洋」と呼ぶことにしたのは、「アジア太平洋」に含まれていないインドを入れるためである。そして、それは安倍晋三首相の時代に日本が主導して、米国も含め世界が受け入れる対中戦略になった歴史をつくった構想であった。

 もし、今回のロシアのウクライナ侵攻を受けて、日印関係を決定的に悪化させれば、クアッドもインド太平洋構想も終わりを迎える。それで喜ぶのは、中国であって、日本ではない。

 だとすれば、日印関係は維持しなければならない。日本は、本来ロシア側であってもおかしくないほどロシアとつながりがあるインドに、ロシア対策で何かを期待すべきでないのだろう。一方で、中国対策として、いずれ必ず、インドとの関係が役に立つことを踏まえ、今は、インドとの関係維持に力を注いでおくべきである。

 
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