2024年11月24日(日)

勝負の分かれ目

2022年5月26日

現代の相撲界だからこそ光る照ノ富士の存在意義

 角界の中で誰よりも肉体的な「痛み」だけでなく、精神的な「苦しみ」を知り尽くす。そういう自負もあるだけに叩かれ続けている大関陣を「やっている人しか分からないこと」とかばい、その後は「良い時は褒めて、悪い時に叩かれちゃうのは良くないと思う」とバッシングに対する自制も促した。

 興味深いシーンもみられた。今場所終了後、同日夜のNHK「サンデースポーツ」に幕内優勝力士として生出演した際、元横綱白鵬・間垣親方からの採点として5点満点で「パワー」と「四つ相撲」の項目が満点となった一方、「メンタル」が3点とされるなど、やや厳しい評価が下された。

 ボードを手に持ったアナウンサーから「『休場後のプレッシャーは難しくなるため、こう採点した』とのことでしたが、いかがでしょうか」と感想を求められると「まあ、大横綱がそう言うんだから……」と苦笑いを浮かべながら言葉を飲み込んだ。心なしか目は笑っていないように見えたのは、筆者だけではあるまい。

 ひと昔前と違って力士の大型化や、いわゆる〝ガチ相撲〟の徹底化など複合的要因も重なり、角界には故障者が絶えない現状があることも事実としてとらえなければいけない。今の大関ら上位陣が満足な勝ち星と安定的な強さを簡単に発揮しにくくなっているのも、こうした角界の時代背景と無関係ではないような気もする。いずれにせよ、そうした中において照ノ富士が5月場所を1人横綱として制した意義はとてつもなく大きいと思う。

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