2024年11月25日(月)

WEDGE REPORT

2013年4月17日

日本政府の
杓子定規

 昨年7月に釜山で開催された日中韓の物流大臣会合で、韓国のシャーシによる日本での輸送を年内に開始することで日韓両政府が合意した。だが、日本政府はあくまで国内法令に従って、日本ナンバーの取得を求めたため、シャーシの設計と製造に追加の投資と時間が必要となり、計画から3カ月以上遅れて年度明けから開始される予定だ。

 韓国政府は従前より精密機器を輸送するエアサスペンション車(エアサス車)などの特殊車両の乗り入れを例外的に認めてきた。

 大手商社の物流部門で働いていた1999年に、エアサス車による液晶製造装置の輸送を始めた物流コンサルのテクノトランス戸次正社長は「当時、韓国メーカーは、日本の露光装置がないと、液晶を製造できなかった。サムスンやLGから頼まれ、韓国の税関に掛け合った。税関は日本のナンバーをつけたエアサス車の一時走行を認め、警察が先導さえしてくれた」という。

 「中小企業育成」と「物流富国」を掲げる韓国政府は、自国産業のためであれば、障害となる制度を柔軟に運用する。今回の日産によるミルクランも、釜山に本社を置く韓国ルノー・サムスン自動車が稼働率低下に苦しむ中で、周辺部品メーカーにとって輸出拡大のチャンスとなる。

 「韓国ナンバーで日本国内を走らせてほしいという要望はある」(国土交通省)が、杓子定規でしか対応できない日本政府。両国の製造業にとってメリットのある日韓ミルクランだが、本格的な広がりを見せるまでには当分時間がかかりそうだ。

◆WEDGE2013年4月号より

 

 

 

 

 

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