2024年4月24日(水)

冷泉彰彦の「ニッポンよ、大志を抱け」

2022年6月15日

日本の制度設計と運用の課題を露呈

 感染症予防対策としては、ほとんど意味のないことにコストが注ぎ込まれ、DXの実践例としても決して成功とは言えない状況を、どう考えたらいいのだろうか。当初は、「意図的に面倒な手続きを設定して、在外邦人の一時帰国を抑制しよう」という「裏の意図」があるのではと思ったこともある。だが、よく考えれば総量規制というのは「1日の入国数」として管理されているので、抑制のためにやっているのではないだろう。

 では、「日本という島国の特質」を生かした「水際対策」に強い支持を与えている世論へのアピールとして行なっているのかというと、そうでもないようだ。このような膨大な労力とコストをかけた水際対策の全貌は、アピールするどころか正確には伝えられていないからだ。

 問題は、もっと具体的なことなのだろう。制度設計の側に運用の現場への理解がない、平時の制度を杓子定規に有事にも適用している、意思決定者にDXに関する原理原則の理解がない、運用を柔軟にするのはいいが柔軟にする際の方法論を知らない、といった官僚組織の弊害があるに違いない。

 これに加えて、恐らくは民間企業の協力に依存している現場には、絶対に判断を委ねないこととし、そのために運用が硬直化するということも重なっているのだろう。いずれにしても、この「水際対策」については、一段落したところで徹底した検証が必要と思われる。

 
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