岸田首相がGX経済移行債を発表する2日前、日本経済団体連合会(経団連)が提言書「グリーントランスフォーメーション(GX)に向けて」を発表し、「政府は、民間の継続的な投資を促すため、自ら中長期の財政支出にコミットすべきである」と指摘。欧米の投資事例を紹介し、「日本で必要となる政府負担額を、世界に占める各国の二酸化炭素(CO²)排出量割合(米国=約 14%、欧州連合(EU)=約9%、日本=約3%)に基づき機械的に計算すると、年平均で約2兆円程度となる」とし、「財源については、カーボンニュートラル(CN)に向けたトランジション及びイノベーションに関する技術の開発・社会実装に使途を限定した国債「GXボンド」の発行等で賄うべきである」と述べている。この一致を不思議に思うのは筆者だけではないだろう。
そもそもGXって?
委員会で議論がなされていないのならば、何のための20兆円だかが見えてなくなってしまう。
たしかに、世界各国では、脱炭素に向けた投資がなされている。「クリーンエネルギー戦略 中間整理」によると、米国が超党派のインフラ法案の中で5年間に約70兆円、EUが10年間に官民協調で約136兆円、ドイツが約7兆円のグリーン分野の景気刺激策、英国が2030年までに政府支出約4.2兆円と誘発民間投資約14.6兆円、韓国が5年間でグリーン分野に約4.3兆円の公共投資、をそれぞれ掲げている。
こうした世界の動きは国債の発行の根拠となり得るが、他がやっているからと言って進めるべきということにはならないだろうし、世界で巨額の資金が動いているからこそ日本として何をやるか示さないといけないのではないだろうか。それがいつか返さないといけない国の借金を使うとならばなおさらだ。
そもそもGXとは、何をすることなのだろうか。「トランスフォーメーション」は「変化、変換」といった意味なのだが、クリーンエネルギー戦略の中間整理ではGXという転換について「産業革命以来の化石燃料中心の経済・社会、産業構造をクリーンエネルギー中心に移行させるもの。また、この大転換に向け、世界規模で、先に新しい市場・ルールを作ったところが勝ち残る先行投資者優位の大競争が既に始まっている」と位置付けている。
実は、このGXは、岸田首相が掲げる「新しい資本主義」にも大きく関わる。5月末に発表した「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画(案)」では、重点投資の対象として、「人への投資と分配」「科学技術・イノベーションへの重点的投資」「スタートアップの起業加速及びオープンイノベーションの推進」に並ぶものとして、「GX及びDX(デジタル・トランスフォーメーション)への投資」が挙げられている。