各国からは批判の声
5月末にTV番組でBJPの報道官がモハメッドを冒涜する言辞を吐いたことに(問題の発言はモハメッドが小児性愛者だと仄めかすものだったらしい)カタール、アラブ首長国連邦(UAE)、サウジアラビアなど湾岸諸国やイラン、インドネシアなどイスラムの諸国が一斉に反発し、インドに抗議に及ぶ外交問題に発展した。国内のムスリムの抑圧には寛容な政権も、貿易、石油、出稼ぎ労働者の仕送りに関わるとあっては放置し得なかったらしく、6月5日にはこの報道官の党の身分を停止し、同時にイスラムを冒涜するツイートをしたデリーのBJPの報道官を党から追放した。もっとも、この一件でBJPのムスリムに対する態度が変化することが期待出来る訳ではない。
このようなモディ政権の抑圧的な国内政治は、米国だけではなく、「クアッド」の諸国との関係を自ずと蝕むこととなろう。米国は抑制された態度を維持し我慢しているように見える。
6月2日、米国のブリンケン国務長官は「2021年の宗教的自由に関する報告」の公表に際し、宗教的自由と宗教的少数派の権利が脅威に晒されている国の一つとしてインドを名指ししたが、これは穏やかな注意喚起に過ぎない。
インドが孤高の大国を目指すのならいざ知らず、必要な時に友邦の助力を期待するのであれば、その友邦の選択を間違わないようにするとともに、行き過ぎたヒンズー・ナショナリズムの抑制にも配慮して友邦との円滑な関係の維持を心がけることが必要であろう。