2022年12月4日(日)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2022年7月1日

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 モディ首相率いるBJP(インド人民党)によるヒンズー・ナショナリズムの政治は、インドの外交政策にも新たなダイナミズムをもたらし、米印関係を管理することが難しくなっている。

Racide / iStock / Getty Images Plus

 インドは、ウクライナの問題は世界に対する脅威ではない、それは欧州の問題であり、欧州の問題は世界の問題であることを意味しない、と言い切るが、インドがそのように言えるのはウクライナの問題がインドの利益に直接的に影響することはないと思っているからに違いない。

 ルールに基づく秩序の維持という観念(国境が武力で変更されることがあってはならないという原則)は地理的に分解可能ではない不可分の観念のはずであるが、インドとしては、そこまで突き詰めて考える必要もないということかも知れない。インドは「クアッド」には加わっているが、インドにとっての唯一の動機はインドに対する中国の脅威なのであろう。

 インドはそれで構わないのかも知れない。米バード大学のウォルター・ラッセル・ミード教授による6月6日付けウォール・ストリート・ジャーナル紙掲載の論説‘Handle the India-U.S. Relationship With Care’の観察に従えば、モディ首相率いるBJPのヒンズーのナショナリストは「西側が設計した国際的な制度にインドの主権を埋没させることを望んではいない」ということでもある。

 しかし、問題はそれだけではない。近年、インドではムスリムを敵視するヒンズーの優越主義・多数派主義が著しく、世俗の多元主義はどこにもない。BJPは圧倒的多数の政党であり議会は監視機能を果たせておらず、モディ政権は権威主義の傾向を強めている。過激なヒンズーの運動家の行動は往々にして暴力、略奪、放火に至るが、モディ首相をはじめ政権は見て見ぬ振りをして沈黙を決め込んでいる。

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