2022年12月5日(月)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2022年7月11日

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 現在、2021年1月6日の議会襲撃事件に関する米下院特別委員会の調査が進められ、米国内にとどまらない幅広い注目を集めている。特別委員会の公聴会は、ABC・NEWSの元プロデュサ―のチームを雇用し、公聴会毎に主題を設定し、その日の証言に事件当日の動画や事前に収録済みの証言を大型スクリーンに映し出して織り交ぜ、TVの生中継に適合したインパクトのある形にまとめて進行させる異例の形式を採用した。

 一回目の公聴会のテレビ中継を観た国民は2000万人、二回目は1100万人というから、この作戦は当たったのではないかと思われる。中継をボイコットするはずだったFOX・NEWSも二回目から中継を開始した由である。

Pixabay / NiroDesign / iStock / Getty Images Plus

 トランプが選挙結果を逆転させようと試みたことは疑う余地がない。特別委員会の公聴会が明らかにした事実に基づきトランプを起訴する以外の選択はガーランド司法長官にはないように見える。しかし、それには重大なリスクが伴う。

 起訴すれば、トランプ支持のグループの暴力を誘発するであろう。次の共和党政権は報復としてバイデンとその息子ハンターに関わるウクライナ絡みのスキャンダルの発掘を仕掛けるかも知れない――政権を取るとそれまでの政敵の政権に政治的報復を行うような風土は排斥されねばならない。

 逆に、起訴しない選択をすれば、上記のリスクは避けられようが、その場合には大統領といえども法の前の平等に服さねばならないという基本的原則を犠牲にすることになる。短期的には、24年選挙におけるトランプの復活を助けることになりかねない。

 起訴には重大な政治的リスクがある。起訴しなければ大統領は罰せられることなく法に違反出来るという重大な先例を開くこととなる。しかし、最悪のケースは、起訴はするが、トランプを有罪とすることに失敗し、彼に勝利を主張させる結果となることである。

 起訴のハードルが高いことは間違いない。最大の法的障害は犯意を立証する難しさである。トランプが選挙に敗北したことを認識していたこと、その上で違法と承知で敗北を逆転させる行動に及んだことが立証されねばならない。

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