2022年10月7日(金)

経済の常識 VS 政策の非常識

2022年7月12日

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原田 泰 (はらだ・ゆたか)

名古屋商科大学ビジネススクール教授

1974年東京大学農学部卒業、博士(経済学)。経済企画庁、大和総研チーフエコノミスト、早稲田大学特任教授などを経て、2015年から日本銀行政策委員会審議委員を5年間務めた。20年4月より現職。『なぜ日本経済はうまくいかないのか』(新潮選書)など著書多数。
 

アベノミクスの成果とは

 2012年12月16日、第2次安倍内閣が発足するとともに、大胆な金融政策、機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略からなるアベノミクスが開始した。

 アベノミクスに依って、2%の物価目標も、飛躍的な高成長も実現できなかったが、失業率は4%から2%に低下し、雇用者数の増加、雇用環境の改善(ブラック企業の減少)、生産性の増加、実質成長率の上昇、名目と実質国内総生産(GDP)の上昇、所得格差の縮小、財政赤字の改善、自殺者の減少などの多くの成果が生まれた(これらの数値の多くは原田泰「QQE7年間の総括-リフレ政策はなぜ正しいか」『証券アナリストジャーナル』2020年7月号、にまとめてある)。うち、包括的な評価の指標であるGDP、なぜか多くの人が信じてくれない財政状況の改善と格差の縮小という事実を再度示しておきたい。

 図1は実質と名目のGDP(四半期の季節調整値)を示したものである。安倍氏が総理となったアベノミクス開始以後、実質GDP、名目GDPとも、それ以前に比べて安定的に上昇していることが分かる。

 08年のリーマン・ショック後に回復はしたが、初期の回復の後は横ばいに近いものだった。それに比較すれば、GDPの成長率は高まった。

 図2は、実質民間設備投資、実質財サービス輸出を示したものである。これらもリーマン・ショック直後の回復の後は横ばいに近いものだった。ところが、アベノミクスにより、民間設備投資は喚起された。

 円安によって、海外からの観光需要が増加した。初期の輸出増加は財ではなくサービス輸出だった。これは都市ばかりではなく地方を潤すものでもあった。

 名目と実質のGDPが増加するということは税収が増加するということである。図3に見るように、政府収入は対GDP比で12年からコロナ前の19年に3.8%ポイントも上昇している(財務省データではなくて、IMFデータで説明している。財務省データでは過大な計上や使い残しなどがあって現実と異なることが多いからである)。

 また、実質GDPが増加すれば、不況対策の必要が小さくなる。結果、政府支出が減少している中で、税収が伸び、財政収支は12年のマイナス8.2%ポイントから19年にはマイナス3%ポイントへと、5.2%ポイントも改善した。うち、5%から8%への消費税増税による改善分は1.5%分でしかない。これだけ財政状況が改善しているなら、消費税増税は不要だったのではないか。

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