2022年10月7日(金)

経済の常識 VS 政策の非常識

2022年7月12日

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原田 泰 (はらだ・ゆたか)

名古屋商科大学ビジネススクール教授

1974年東京大学農学部卒業、博士(経済学)。経済企画庁、大和総研チーフエコノミスト、早稲田大学特任教授などを経て、2015年から日本銀行政策委員会審議委員を5年間務めた。20年4月より現職。『なぜ日本経済はうまくいかないのか』(新潮選書)など著書多数。
 

 19年9月の消費税8%から10%の引上げによる増収分の効果はコロナ不況の混乱で分からなくなっているが、19年の税収はむしろ低下した。20年以降の税収はコロナ不況対応での大盤振る舞いに依るものである。

 年205兆円程度の一般政府支出をいきなり240兆円にも増やせば、回りまわって税収も増えるということだろう。ここでの教訓は、金融緩和政策でGDPが増加すれば、財政は改善するという単純なことであるが、この事実を認めない人が多いのには困ったものである(例外は中里透「私見卓見 データに基づく政策論議を」日本経済新聞)。

 さらに、所得分配も改善した。失業者は所得のない人だから、失業が減って所得ゼロの人の所得が増えれば所得分配が改善するのは当然である。広く使われる相対的貧困率で見てもジニ係数で見ても格差は縮小している。

アベノミクスは限界なのか!?

 アベノミクスでそれ以前から飛躍するような高成長がもたらされなかったのは事実である。しかし、それ以前より明らかに改善した事実は多々ある。それを無視して、アベノミクスのプロモーターの言う通りの効果が得られなかったから元に戻した方が良いというのはナンセンスではないか。

 また、プロモーターの言う効果が得られなかった理由として、第3の矢の成長戦略が不十分だったからだというものがある。そうかもしれないが、具体的に何をするべきかが分からなければ、成長戦略は単に補助金をばらまくだけとなってしまう。

 政府が使ったお金の効果をきちんと確認することなどありえないのだから、うまくいかない。そもそも、自由や競争の嫌いな人が多いから成長戦略ができないのではないか。

 成長戦略が難しいからこそ大胆な金融緩和が必要である。人手不足になれば、生産性を引き上げることを真剣に考えるし、生産性上昇のための雇用削減に対する反対も小さくなるからだ。

政治も経済も事実を見ることを教えてくれた

 安倍元首相の偉大さは、事実を見て政治家として考えぬくことにあるのではないか。政治家としてとは、考え抜いたことを、手練手管を含めて関係者を説得し、実現するということである。

 残念ながら、安倍元総理の反対者は、現実に起きていることを認めない人が多い。安全保障環境の変化についても、経済事象についても事実を認めない。筆者は、エコノミストとして後者についてのみ書いた。事実を認めなければ、それは言論であってもテロと同じになってしまう。それが野党を長期に低迷させてきた要因ではないだろうか。

  
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