2024年4月20日(土)

解体 ロシア外交

2013年4月15日

 さらに、キプロスは美しい自然と年間通じての温暖な気候に恵まれ、寒さが厳しいロシアとは対照的で、バカンスに最適である。そして、忘れてはならないのは、キプロスはタックス・ヘイブン(租税回避地)としても有名であることだ。法人税率はEU加盟に際し、それまでの4.25%から10%に引き上げられたが、依然としてEU加盟国の中で最も税率が低い。観光業以外に主要産業がないキプロスにとって、企業や定住者を誘致するための生き残り策であった。

 加えて、ロシアとCIS諸国の一部との間に結ばれた租税条約には、投資家に有利な条項があり、キプロスは近年、対ロシア投資の窓口となってきた。キプロスが2004年にEUに加盟した後も、ロシア人資本家は、法人税が低く金融管理も甘い同国にペーパーカンパニーを乱立させ、自国当局の管理や徴税を逃れてきたのである。実際、以下の表からも、キプロスが最大の投資国となっていることは一目瞭然だ。

 さらに、キプロスの投資家の大部分の実態はロシア人だと言われている。ロシア人の大金持ちにとって、キプロスは極めて魅力的だ。国内での課税と政治的なリスクを避けられ、さらに争いを解決するためキプロスの比較的信頼性が高い裁判制度にアクセスできる。その上、バカンスも楽しめるとなれば、まさに天国だろう。

 このような状況下でキプロスの金融財政危機が顕在化する前から、キプロスはロシアに再三にわたり支援を要請してきた。危機が顕在する前の2011年にも、ロシアは25億ユーロの支援を行っているし、2012年9月にも多額の支援が行われたようだ。EU加盟国であるキプロスがロシアに支援を要請する状況を、EUは長年冷やかに捉えてきた。それが、キプロスに対するEUの異例の決議の背景にある。

ロシアをけん制する好機 

 EUは3月15~16日に財務相会合を開き、キプロスに対し、国際通貨基金(IMF)と共同で、約100億ユーロ(約1兆2000億円)の支援を実施することで合意したが、異例の条件が付与された。全ての銀行預金に、10万ユーロまでの預金に6.75%、それを上回る預金に9.9%の課税の課税(額では58億ユーロ)を導入するというのだ。

*最近死去したベレゾフスキー、現在も収監中のホドルコフスキーなど、ロシア人の新興財閥が政治的理由でプーチンに抹殺された例は少なくない。


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