トルコの地政学的重要性は高い
エルドアンは「ひどく腹立たしい」存在に違いない。しかし、黒海と地中海とを結ぶボスポラス海峡とダーダネルス海峡を扼するトルコの地政学的重要性は極めて大きい。したがって、トルコをNATOから追放することが可能だとしても、その選択は戦略的惨事であり、西側がトルコとの関係を何とか管理して行かざるを得ない。
しかし、トルコの行動は、同国はこの地域でリーダーシップを主張し覇権を目指すべき当然にしてユニークな立場にある、との観念に基づくもののようであり、トルコの軍事力はこの野心に見合う水準に接近しつつある印象があるので厄介である。
スウェーデンとフィンランドのNATO加盟との関連で梃になり得るものがあるとすれば、それは米国によるF-16戦闘機のトルコへの売却であろう。バイデン政権はトルコが求めるF-16戦闘機の近代化(新たな戦闘機の供与と既存の戦闘機の改修)を支持することを公にしたが(もっとも公式には両国のNATO加盟問題と直接の関係はないとしている)、この実施には議会の承認を必要とする。トルコが両国の加盟を妨害するのであれば、議会の承認は覚束ないこととなろう。