2025年3月1日(土)

家庭医の日常

2025年1月26日

病気や症状、生活環境がそれぞれ異なる患者の相談に対し、患者の心身や生活すべてを診る家庭医がどのように診察して、健康を改善させていくか。患者とのやり取りを通じてその日常を伝える。
(Kerkez/gettyimages)

<本日の患者>
C.N.さん、19歳、女性、予備校生。
S.N.さん、56歳、女性、主婦、C.N.さんの母。

 「先生、この子、インフルエンザにかかってるんじゃないでしょうか。先週まで帰省していたこの子の姉が一昨日高い熱を出して、昨日アパートの近くの診療所へ行って検査したらインフルエンザだったんです。きっとこの子も、私たちもうつってると思うんですよ。私たちはともかく、この子は今度の週末に入試を控えていて、受験できなくなったらと思うと、とにかく心配で心配で」

 娘のC.N.さんを連れて私の診察室に入って来るや、母親のS.N.さんは一気にまくしたてた。C.N.さんはちょっと照れたように私に会釈した。元気そうだ。

 彼女はS.N.さんの次女で、2022年1月の『年齢とともに高まる転倒リスクに対応するには』登場した、当時転倒予防のケアの対象だったK.H.さんと同居している孫である。3年前は高校1年生だった。残念ながら昨年の大学入学試験では志望校に合格できず、自宅から予備校に通って合格を目指している。

「季節性インフルエンザ」と「新型インフルエンザ」

 インフルエンザが流行している。厚生労働省の「インフルエンザに関する報道発表資料 2024/2025シーズン」によると、昨年第52週(12月23日〜29日)での定点観測医療機関あたりのインフルエンザ感染者数は64.39と、昨シーズンのピーク33.72を上回った。

 1月10日には、福岡資麿厚生労働大臣が医療機関や薬局に対して、過剰な抗インフルエンザ薬の発注を控えるように求めたことが報道された。想定外の流行で製造が追いつかないことを理由に、複数の製薬会社が抗インフルエンザ薬の出荷制限や出荷停止の対応をとったことを受けての措置だ。

 インフルエンザのうちインフルエンザA型は、ウイルス粒子の表面を覆っているタンパク質の抗原が変異することで新たな感染を起こしやすくなる。抗原変異には、小さな段階的アミノ酸置換(抗原ドリフトと呼ばれる連続変異)と新たな亜型ウイルスを生み出す大規模な変化(抗原シフトと呼ばれる不連続変異)がある。


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