2025年12月6日(土)

家庭医の日常

2025年1月26日

 しかし、例えば、米国の外来および救急診療部(ER)では、インフルエンザ感染が疑われる患者に対して抗ウイルス薬治療を開始するための検査は必要ないとされている。インフルエンザが流行している季節にはなおさら、患者の症状からインフルエンザの可能性を診断していくことが一般的だ。

 そこで、病歴と身体診察に基づいたインフルエンザ診断の精度を向上させることができれば、臨床医が不必要な検査や治療を避けるのに役立つ。

 症状からインフルエンザを診断できるかの臨床研究の歴史は長い。この分野で精力的に研究をしている米国のアカデミック家庭医らが米国とスイスの臨床研究を分析して開発した「症状のみに基づく臨床予測ルール」がある。発熱と咳に2点、筋肉痛に2点、悪寒または発汗に1点、症状が過去48時間以内に発現していれば1点、としてカウントした合計点で評価すると、インフルエンザのリスクは0〜2点で8%、3点で30%、4〜6点で59%だった。

 これらの研究はコロナ禍以前のものであり、今後は症状からインフルエンザと新型コロナウイルス感染症との鑑別もできるような臨床予測ルールが作られることを期待したい。

どんな場合にインフルエンザの検査をするか

 海外では、インフルエンザの検査は、それ以上の検査や不必要な抗菌薬の使用が削減されるか、または高リスクの家庭内接触者の予防ケアにつながる場合に推奨されている。

 検査に関しては、地域でインフルエンザがどれだけ流行しているか(有病率)に応じて、検査の種類とその精度の限界を知る必要がある。17年に発表された研究によると、検査が陽性だった時にインフルエンザである可能性(陽性的中率 positive predictive value; PPV)と検査が陰性だった時にインフルエンザでない可能性(陰性的中率 negative predictive value; NPV)を示すと、検査の種類によって幅があるが、インフルエンザA型は、成人では流行期(有病率33%)のPPVは92〜98%、NPVは78〜94%、非流行期(有病率5%)のPPVは55〜82%、NPVは97〜99%、小児では流行期のPPVは96〜98%、NPVは85〜95%、非流行期のPPVは71〜83%、NPVは98〜100%だった。

 インフルエンザB型は、成人では流行期のPPVは96〜99%、NPVは75〜89%、非流行期のPPVは71〜95%、NPVは97〜99%、小児では流行期のPPVは97〜99%、NPVは85〜98%、非流行期のPPVは78〜91%、NPVは98〜100%だった。今後も新しい検査キットは開発されるので、使用する際には地域の流行状況とその検査の精度を確認して用いるようにしたい。


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