どんな場合に抗インフルエンザ薬を使用するか
海外での抗ウイルス薬によるインフルエンザ治療は、合併症や重症化のリスクが低くて、他に疾患のない外来患者には通常推奨されない。推奨されるのは、合併症や重症化のリスクが高い、または入院中の重症患者である。
発症から36時間以内に治療を開始した場合、症状の持続期間が約24時間短縮され、病気の重症度が軽減される。
外来診療での成人および小児を対象とした抗ウイルス薬によるインフルエンザの治療についての既発表および未発表のランダム化比較試験のシステマティック・レビューでは、入院または死亡の減少は確認されなかった。一方、入院した成人および小児を対象とした3つの観察研究では、抗ウイルス薬の使用と死亡率の減少との間に関連が認められた。
このことから、米国疾病予防管理センター(CDC)および米国感染症学会(IDSA)は、インフルエンザの疑いまたは確定診断があり、重症または進行性の疾患があり、インフルエンザ関連合併症のリスクが高い、または入院している患者に対して抗ウイルス薬での治療を推奨している。IDSAは、インフルエンザ関連合併症のリスクが高い人と家庭内で接触するインフルエンザ感染者にも抗ウイルス薬での治療を検討することを推奨している。
日本では、抗ウイルス薬のオセルタミビル(商品名「タミフル」)の全世界の処方件数のうち日本が75%を占めるという話が07年から拡散している。製造元のロシュ社から発表されたとの情報もあるが、詳細な情報源は見つけられなかった。
もう18年も前のことになるので、根拠の明らかな新たなデータが欲しいところだ。ただ、外来診療で、合併症や重症化のリスクが低い患者に抗ウイルス薬を処方することは有益性に乏しく、副作用の発生数も増えることになる。安易に処方すべきではないだろう。
C.N.さんは、症状がないけれどインフルエンザに感染しているかもしれない。感染してもまだ症状が出ない潜伏期間にいるかもしれない。感染していないかもしれない。
抗ウイルス薬は予防投与もできるが、C.N.さんは今まで健康だったので、予防にしろ治療にしろ使用するメリットに乏しい。本人は薬の副作用を嫌がっている。
迅速検査については、検査結果によってケアの方針は影響されないので、今それをする意義も乏しい。ということで、外出は避け、特に高齢者が同居しているので(祖母のK.H.さんは元気で、昨年11月にインフルエンザの予防接種もしているが念のため)家族内の感染を防ぐための対策(手洗い、マスク、食器・タオルの個別使用など)をして、自宅で受験勉強をしつつ、明日電話による診療で様子をフォローアップすることで私たち3人は合意した。
「じゃあ、インフルエンザのことはあまり心配せず、入試頑張ってね」
「はい。先生、『点が付く』ご利益がある『点付き体操』があるって知ってますか」
「え、今はそんな体操が流行ってるの? 僕らが少年だった頃は『天を突く』動作の『天突き体操』をしてたよ」
「わぁ〜レトロ!昭和の香り(笑)」
「ははは、入試には出ないだろうけどね」
