前者では小規模なアウトブレイクにつながり、温帯地域では主に寒い時期に発生するため、「季節性インフルエンザ」と呼ばれる。後者ではその亜型のウイルスに対してほとんどの人が免疫を獲得していないので、広範囲にわたるパンデミックを起こす可能性がある。このような亜型は、日本の感染症法では「新型インフルエンザ」と規定される。
直近の例は、09年にメキシコで確認されて世界的パンデミックになったものがある。新型インフルエンザも時間と共に多くの人が免疫を獲得すると流行が小規模となって季節性インフルエンザになっていく。
インフルエンザにかかるとどうなるか
インフルエンザの主な感染経路は、感染者の咳やくしゃみによって放出された感染性飛沫を吸い込むことであるが、会話や通常の呼吸で生じる小粒子による空気感染や媒介物による接触感染もあるという。
一般的な潜伏期間は24~48時間である。患者は症状が出る1~2日前から感染力を持つため、感染者自身が知らない間に他人を感染させていることがある。
発症は通常急速で、ほとんどの場合、咳、発熱、筋肉痛、悪寒または発汗、倦怠感を伴う合併症のない呼吸器感染症を引き起こし、症状は2~8日間持続する。小児では、嘔吐や下痢などの非特異的な胃腸症状が発生することがある。
感染力は症状発現後5~7日間まで持続する。小児や免疫力が低下している人では、ウイルスの排出が長引く場合がある。
インフルエンザにかかっても全員が発熱するわけではないし、感染してもまったく症状が出ない人もいるので、診断は難しくなる。米国テネシー州とウィスコンシン州で17年から23年まで5シーズンのインフルエンザ流行期間中に実施された家庭内感染調査では、インフルエンザの検査で陽性となった人の8%は無症状だった。呼吸器以外の症状が出た人は6%、インフルエンザとは思えない軽い風邪の症状が出た人が23%、インフルエンザを思わせる症状が出た人は62%である。
インフルエンザに感染しても、無症状から典型的なインフルエンザの症状まで、かなりバラついていることがわかる。
症状からインフルエンザを診断できるか
日本では、インフルエンザを心配して医療機関を受診すれば、多くの場合、ほぼ自動的に迅速検査をして、結果が陽性なら抗ウイルス薬が処方されるだろう。迅速検査と抗ウイルス薬のメリットとデメリットや費用についての説明が提供されて、患者の意向も含めて方針が相談されることは少ないだろう。
