ロシアとの関係を見直す
ウクライナ侵攻における問題点を、中央アジア諸国は自国の問題として対応していく必要性を認識している。従来なら集団安全機構のなかでプーチンからの要請があれば協力をせざるを得ないという立ち位置だったが、ウクライナ戦争が長期化する中で、ロシアとの関係をこれまでとは異なる視点で判断するように変化した。
特にカザフとの関係においてはナザルバエフ前大統領を中心とする求心力が徐々に低下してきた結果、2019年にトカエフ大統領へと代替わりになった。今年1月には、西カザフで国内紛争が起こった。その紛争を抑えるためにロシアの力を借りることになり、その結果、混乱は収まり何とか事なきをえた。
ところが翌2月、ウクライナ侵攻が始まった。ウクライナ側が米国やNATOの支援を背景に臨戦体制に突入し、ロシアの短期決着という戦略は失敗した。そしてプーチン大統領がカザフに対してウクライナ戦争への協力を打診した際、トカエフ大統領はなんと一切義勇軍を送ることはできないと回答をしたのだ。
プーチン大統領の立場からすると経済的な関係においては徐々に中国との関係からロシアとの関係が希薄になっていると思っていたものの軍事や政治外交の分野ではカザフを始めとする中央アジア諸国を掌握しておきたいという考えを持っていたのは当然である。
全ての現象の「一寸先は闇」と見える裏で蠢くプロパガンダと多民族国家群の多面的な反応を複数の情報をベースに理解しようとしたが、何が真実で何が虚偽であるのかは理解できなかった。そのような事情もあって、かくなる上は現場主義で対処するしか方法はないと考え、資源調査を兼ねて現地出張を決断したのだった。
訪問先はシンガポール経由でトルコのイスタンブールに入り、数日滞在してからウズベクのタシケントに6日間、キルギスのビシケクに6日間、カザフのアルマトイとオスカメンに6日間である。筆者は中国に300回以上、ロシアに60回以上、中央アジアにも50回以上は訪問しており、現地には友人知人は多く、今回の訪問でも毎日のように知人にインタビューを行った。その中でも足繁く通ったカザフの知人からは有用な情報や裏話を聞くことができた。