2024年4月27日(土)

World Energy Watch

2022年7月22日

 そもそも洋上風力発電を導入することは、日本の産業の競争力を低下させることにもつながる。日本の洋上風力設備の利用率は、欧州北海をかなり下回ると予想されており、設備費に差がなければ発電コストは欧州より高くなるからだ(インフレより深刻 日本をますます貧しくする洋上風力 )。

経済と国民生活を助けるエネルギー政策を

 送電網整備、洋上風力導入に電気料金という形で消費者の資金と税金が投入されるが、実現すれば電気料金の上昇は避けられそうにない。2兆円使うのであれば、米国で最も開発が進み、欧州でも多くの国が導入を検討している米国ニュースケールの小型モジュール炉(SMR)を導入すれば、電気料金を抑制し、停電危機を回避することが可能だ。

 ニュースケールによると、設備投資額は100万kWの規模でも日本円で4000億円だ。2兆円あれば500万kW建設することが可能になる。工期も着工後3年とされている。

 ニュースケールには日本企業も投融資を行っているが、5月のバイデン大統領訪韓時の米韓共同声明は、韓国企業による輸出の可能性に触れている。日本も早く体制を整え製造に着手すべきだろう。

 500万kWの供給が二酸化炭素を排出しない電源により可能となれば、「洋上風力プラス送電網」より安定供給という利点があり、電気料金も抑制される。原子力規制委員会も、早期に審査を終えるように体制を整える必要があることは言うまでもない。

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