米大統領選挙における選挙人集計法の改革を検討して来たスーザン・コリンズ(共和)とジョー・マンチン(民主)両上院議員が率いる上院の超党派グループ(共和党:9人、民主党7人)は成案を得て、7月20日、選挙人集計改革法(Electoral Count Reform Act)を議会に提案した。
選挙人集計法が1877年に制定された背景には、合衆国憲法が選挙人票を巡る争いを解決する仕組みを用意していなかったことがある。76年の大統領選挙で共和党のヘイズと民主党のティルデンのいずれが勝ったかを決定するために議会は臨時の委員会を設置することとなった。それを受けて、議会は将来の紛争を解決するための方法を定めた選挙人集計法を成立させたという経緯である。
しかし、この選挙人集計法は、選挙人の選出につき議員が異議を唱えることにあまりにも低いハードルしか課さず(現在は州の票の合法性に挑戦するには両院それぞれ1人の議員が異議を提出することで足りる)、また、上院の議長を兼ねる副大統領に特定の州の票を一切除外する憲法上の権限があるかのような誤った主張に根拠を提供する結果ともなった。
現在、すべての州は州の票を選挙当日の有権者による一般投票に従って割り当てているが、それは憲法が要求している訳ではない。憲法はどう割り当てるかは州議会に委ねている。従って、理論的には、州議会は選挙当日の後になってその好みの選挙人のリストを作成出来ることになる。
こうした制度上の不備が重なって2021年1月6日の議会襲撃事件につながった可能性が高い。
21年1月6日の議会における選挙人票の集計作業とその際に起きた議会襲撃事件に直接関係する改革として重要なものは、第一に副大統領(上院議長)の役割に関するものであり、その役割は「非裁量的」な性格のものであり、選挙人に係わる紛争について「単独で決定し、受諾し、拒否し、あるいは裁定する如何なる権限も有しない」と規定している。
第二には、選挙人について議会が異議を提出するための要件を厳しくし、上下両院それぞれ20%の議員の同調を必要としたことである――異議の承認には上下両院それぞれ過半数で足りることに変更はない。