以上に劣らず重要な改革は、州から議会に報告される選挙人のリストが単一であることを確保する―――競合する選挙人のリストが提出され事態が紛糾する可能性を排除する――規定が盛り込まれていることである。そのために、選挙人のリストはまずもって知事による認証を要し(選挙当日において州法により知事以外の人物が指定されている場合は、この限りでない)それが終結的(conclusive)であることを規定している。その認証は、選挙当日に先立って成立した州法によるべきことを規定している。
トランプ派による選挙操作も防止か
ワシントン・ポスト紙のオルセンによる7月21日づけの論説‘Electoral Count Act reform won’t save our republic. But it could help preserve it.’は、選挙人集計法を改革する法案を評価し、その中で、「トランプ一味が選挙の後になって共和党支配の州議会を抱き込み、選挙人の決定のルールを変更して都合の良い別の選挙人のリストを提出させることを試みた」と指摘している。
上記の規定はこのような可能性を排除するものである。更に、選挙人に係わる紛争は当該州において3人の連邦裁判官からなる特別のパネルで審理させ、最高裁へ直接上訴することを可能とし、12月の選挙人による投票日までに決着させることを規定している。
以上、全体として、選挙人に係わる紛争は州のレベルで(最終的には法廷で)解決して連邦議会に持ち込むことを排除し、連邦議会には単一の選挙人のリストが提出されることを確保する趣旨と考えられる。これは正しいアプロ―チである。
現在のような選挙結果の如何がそれぞれの国民に脅威を構成すると受け止められるような雰囲気は不健全としか言いようがない。そのような状況に対してこの改革がなし得ることはないにせよ、その重要性を些かも減じるものではない。
難解で曖昧な古色蒼然たる選挙人集計法が刷新を要することには概ねコンセンサスがあるようであり、(今後、他にも論点が出されるのかも知れないが)年末までに成立を期待出来るであろう。