――RPAの導入にはどのような効果があったか。
毛塚 実際、RPAの導入により実証実験では対象業務の所要時間を8割削減することに成功した。業務を自動化するためには、業務フローを可視化する必要があり、その作成過程でこれまでどのように業務を進めてきたか、業務の棚卸しをすることになる。そうすると、従来の業務の改善すべき点や不要なプロセスが見えてくる。これまでの取り組みを可視化し効率化できるという副次的なメリットもあった。
行政のDXを進めると、「市民は諸手続きの電子申請ができ利便性が上がる一方、窓口業務は維持しなければならず、結果的に職員に二重の負荷がかかる」という市役所内部の声もある。そうした場合、例えば、電子申請の事後処理にRPAをかませて職員の負担を軽くするなど、二重になった業務負荷を減らす工夫が重要である。もちろん、従来業務を単純にデジタルに置き換えるだけではなく、抜本的に仕事のやり方を見直すことも検討すべきであろう。
――デジタル田園都市国家構想やスマートシティなど、国を挙げてデジタル化を推進している。地方自治体が意識すべきことは何か。
毛塚 国はデジタル田園都市国家構想推進交付金の他、行政や地域のデジタル化に向けさまざまな予算を確保している。新たなチャレンジを苦手とする自治体に対し、国が予算を出し、選択肢を与えることは挑戦のきっかけとなる。しかし、自治体側も、国のスケジュールに合わせてデジタル化を進めるだけではなく、自治体独自で考え動いていくことも重要になる。
「絶対に成功する改革」などはないし、そのような発想では新しいチャレンジはできない。リスクを取り他の自治体に先駆けることでその地域の未来は拓けるだろう。
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コロナ禍を契機に社会のデジタルシフトが加速した。だが今や、その流れに取り残されつつあるのが行政だ。国の政策、デジタル庁、そして自治体のDXはどこに向かうべきか。デジタルが変える地域の未来。その具体的な〝絵〟を見せることが第一歩だ。
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