――新しいチャレンジをするといっても簡単ではないと思う。つくば市副市長在任時に何を意識していたか。
毛塚 つくば市は私が着任する前から国家プロジェクトの「特区」に指定され、その推進主体になることがあった。しかし、自治体独自の取り組みも機敏に進めることを重視していた。
副市長在任時の4年間で大切にしていたのは、実証実験ベースでさまざまな取り組みを進めていくことである。実証実験の公募の枠組みとして、①補助金を拠出して有償で採択するもの、②実証実験のフィールドだけを提供し無償で採択するもの、の2つを用意した。
①について、多くの自治体では、実証実験実施の目途が立ってから予算を確保するので、翌年度分の予算を確保するとなると実現まで約2年間がかかってしまう。しかし、つくば市の場合は、毎年度1件あたり上限100万円、計5件の実証実験を行うことをあらかじめ決め予算取りしておき、その上で提案を採択してすぐに補助金を拠出できるような仕組みにした。このように有償の手続きについては、実施に至るまでの期間を圧縮して自治体と民間企業が協業してチャレンジしやすい手法を取った。
②については、補助金の拠出をしない代わりに、採択した提案に対しては市が徹底的に調整事を担い、実証実験を全面的にバックアップする形をとった。当初予算として議会に諮っていなくても、無償のため時期を問わず開始できるというメリットもある。
こうして、つくば市では有償と無償のスキームを組み合わせ、成功が確約できないような試みでもまずは取り組み、課題が生じれば改善して次につなげるということを繰り返した。
――つくば市は日本の行政で初めてRPA(ソフトウェアのロボットにより、繰り返しの多い定型事務作業を自動処理する技術)を導入したことで知られる。どのような経緯で導入することになったのか。
毛塚 市役所の仕事には、膨大な申請書を受け付け、手続きを進めたり、情報を登録したりと、定型的な業務が数多く存在する。そうした業務を自動化して職員の負担を軽減するために、地方自治体で初めてRPAの実証実験を行った。全国初の事例であり、予算確保が難しかったため、前述の「無償」の枠組みで公募し、協業してくれる民間企業を選定した。実証実験で効果が測定できたため、その後予算化して正式に導入する運びとなった。