2024年4月26日(金)

インドから見た世界のリアル

2022年9月3日

 サッカーであれば、防御しかしていないチームは、勝つことができない。攻撃しているチームが、常にどこを攻撃するか、決める。どのような試合運びにするか、も決める。防御だけでは勝てないことは、常に考えておく必要がある。

 そのような状況において、日本側の問題点は何か。それは、法的にも、装備にもあるだろう。

 日本では、自衛隊の行動に関する法律は、「ポジティブリスト」で書かれている。どのような状況で何をしていいか書いてある方式だ。これは逆に言えば、そこに書いていないことは、やってはいけないのである。

 一方、他国では、「ネガティブリスト」で書かれている。軍隊が何をやってはいけないか、書かれており、それ以外は、やっていいのである。これだと政府は、柔軟に軍隊を動かして対応する。柔軟に動ければ、戦いで、より主導権をとれる。

 装備品についても、問題がある。今回のシミュレーションにおける日本は、防御しかしていない。攻撃力がなければ主導権は取れない。

 今、日本は、敵の攻撃に対して反撃する能力の保有を検討している。例えば、長射程で、陸地を攻撃できる、巡航ミサイルの保有を考えている。つまり、防御だけでなく、攻撃を行うことを考えているのだ。

反撃能力運用のための検討が必要だったかもしれない(WEDGE)

 それは戦いにおいて主導権をとることにつながる。日本に攻撃力があれば、中国は、日本から攻撃を受けるかもしれない、そう想定して、駆け引きを考えるだろう。中国としては、日本が中国のどこを攻撃するか、わからないから、かなり広い範囲を防御せざるを得ず、困るだろう。

 ただ、日本の攻撃力は限定的だ。中国に比べ、予算がないからだ。だから、効率的な方法を考える必要がある。

 巡航ミサイルを水上艦に搭載すれば、中国は、その位置を正確に把握してしまい、日本がどこを攻撃するか、簡単に予測されてしまう。しかし、同じ巡航ミサイルを日本の潜水艦に搭載して運用するならば、中国は、日本がどこを攻撃するか、わからない。

 仕方ないから、中国は広い範囲に防衛線をはり、戦力を分散させるだろう。巡航ミサイルを潜水艦に搭載するほうが、水上艦に搭載するよりも、日本が主導権を握りやすいことになる。

 シミュレーションでも、こうした反撃能力の運用についても検証してほしかった。

「負けない」ために準備を

 今回のシミュレーションは、大変意義あるものであった。しかし、実際に検討してみると、日本が台湾有事に対応できるのか、不安になるものでもあった。戦争が避けたくても避けられない可能性が出てきたとき、日本には、重要な問いがあるはずだ。

 次の戦争も負けたいか……。それだけは、避けたい。

   
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