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2022年9月20日

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岸良裕司 (きしら・ゆうじ)

ゴールドラットジャパンCEO

1959年生まれ。京セラなどでの勤務を経て2008年より現職。全体最適のマネジメント理論TOC(Theory of Constraints:制約理論)を用い多くの産業界、行政改革で目覚ましい成果をあげ、グローバルに活動するトップエキスパート。東京大学ものづくり経営研究センター非常勤講師。著書に『全体最適の問題解決入門』、『優れた発想はなぜゴミ箱に捨てられるのか?』(以上、ダイヤモンド社)など多数。

誰しもが持つ「考える力」
それを妨げる障害とは?

 日本人には、現実を直視し、それを論理的かつ正確に思考する力が必要だ。例えば、イノベーションを生むにもプロセスが存在する。日本人の多くは「アイデアを出すこと」が最も難しいことだと思っているが、イノベーション大国といわれるイスラエルでは、「アイデアをビジネスに変えること」や「そのビジネスでお金を稼ぐ」プロセスを考え抜くことに全力を尽くしている。

 イノベーションとは既成概念に対する挑戦である。前例がなくて当たり前だ。最初から人々に称賛され、歓迎されるわけがない。だからこそ、こうしたプロセスをたどる中で、そのイノベーションに価値を持たせるための論理的な思考力が重要なのである。

 世界で1000万人もいないユダヤ人が次々とイノベーションを起こす理由は、教育にあると広く言われている。その肝は論理的な思考力を子どもの頃から、家庭でも学校でも、日常的かつ徹底的に鍛えていることだ。

──日本人はそうした思考が苦手な面がある。打破する鍵はあるか。

岸良 本来、人間は考える力を持っている。しかし、日本の教育現場で教えられるのは「覚える」ことに偏りがちで「考える」教育が少ないことがその一因だと感じる。

 打破する鍵は「科学者のように考える」ことだが、実践するのは簡単ではない。それは、科学者のように考えることを妨げる次の4つの障害があるからだとゴールドラット博士は指摘している。

 障害①物事は複雑だと考える:グローバル化が進み、さまざまなステークホルダーが絡む世の中で、ますます物事は複雑化していると考えてしまうことがブレークスルーとなる解決策を考える妨げになる。

 科学者は一見複雑に見えるさまざまな事象の中に何らかのシンプルな法則があると考える。それがブレークスルーの源泉になるのである。

 障害②人のせいにする:人のせいにしたところで問題が解決しないことは明らかだ。これが問題解決への道を閉ざしてしまう。科学実験では予測と違う結果が出た時、どこかに「思い込み」があったのではないかと考える。科学者なら当たり前の考え方だ。人のせいにせず、「思い込み」のせいにすれば、誰も傷つくことなく、既成概念(思い込み)を打破し「問題解決」が一気に進むことになる。

 障害③対立は仕方ないと考える:あちらを立てれば、こちらが立たずの対立があると、「妥協案」を考えてしまう。それが真の解決策を見つけ出す妨げになる。妥協とは、どちらか一方、または双方に我慢が必要で完全な解決策とは言えない。科学の世界では、対立する概念があれば、それを両立する方法を考える。それがブレークスルーの源泉となる。

 「和」を重んじる日本人は、初めから対立を避ける傾向が強い。だが、それがブレークスルーとなる解決策を見出す機会を逸することになってしまう。対立を隠しても真の解決策にはならない。対立が解消された時に初めて真の「和」が生まれるのである。

 障害④分かっていると考える:これは、学びが止まることを意味する。科学者はある学びを得たら、「それを土台に次に何ができるか」を考える。分かっていると思える状態は「次の飛躍のためのより強固な土台」なのだ。

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