2022年9月27日(火)

バイデンのアメリカ

2022年9月19日

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斎藤 彰 (さいとう・あきら)

ジャーナリスト、元読売新聞アメリカ総局長

1966年早稲田大学卒業。68年米カリフォルニア州立大学バークレー校大学院修士課程修了、70年読売新聞入社。ワシントン常駐特派員を2度務めた後、アメリカ総局長、東京本社取締役調査研究本部長などを歴任。著書に『中国VSアメリカ』『アメリカはカムバックする!』(いずれもウェッジ)がある。

トランプが起訴に値する法的な理由

 上記4項目の捜査対象の中で、最も重大な嫌疑がかけられているのが、連邦議事堂乱入・占拠事件であることはいうまでもない。

 この点について、ワシントン・ポスト紙も先月、政府高職者の刑事訴追問題に精通したペンシルバニア州立大学のクレア・フィンカイシュタイン法律・倫理担当教授、ジョージ・W・ブッシュ政権下でホワイトハウス「法と倫理」担当弁護士を務めたミネソタ州立大学のリチャード・ペインター法学部教授の共同執筆による「トランプ起訴の場合、彼が犯した最悪の罪状を対象とすべきだ」と題する寄稿文を掲載した。

 いうまでもなく「最悪の罪状」とは、連邦議事堂乱入・占拠事件を意味しており、両教授は、なぜトランプ氏が起訴に値するかについて、専門家の立場から説得力ある論拠を説明している。

 まず、両教授によると、「トランプが刑事告発されるべき最も深刻な二つの大罪」として、「反乱罪insurrection」と「扇動的陰謀罪seditious conspiracy」が適用され、ガーランド司法長官が「起訴」判断を下すとすれば、この2大犯罪を念頭に置いたものとなる。

 続いて、トランプ氏の場合、なぜ、この2大犯罪が適用対象となるかについて、以下のような理由説明を行っている:

1.【反乱罪について】

 刑法第18条2383項は「何びとであれ、合衆国の権威あるいは連邦法に背き反乱、暴動を教唆、関与、ほう助、支援した者は刑事罰を科せられる」と規定している。

 この点、トランプ氏は事件発生直前、ホワイトハウス前集会にかけつけた熱狂的トランプ支持集団に対し、「議事堂に行進しよう」「自分もすぐに向かう」などと呼びかけたが、この行為が「教唆、関与、ほう助」にあたる。また、トランプ氏は、暴動化した群衆が議事堂内に突入し、議会警察では対応不可能な大混乱状態となった段階になっても、大統領権限で事態鎮圧のための国家警備隊出動を命じることを怠った。

 この時の不作為が騒乱への「関与」に相当する。さらに、ペンス副大統領が上院議長として「バイデン大統領選出」の最終認証を宣言するのを阻止するため、大統領は自らのツイッターを通じ暴徒たちに対し「(議事堂内にいた)ペンスの身柄を確保せよ」などと呼びかけたが、この行為も、自ら現在の地位に居座るために、新大統領就任の認証を妨害したことを意味しており、平和的政権移行という「合衆国の権威および連邦法」に背いたことは明白である。

 2.【扇動的陰謀罪について】

 この犯罪は、犯行の計画に一人以上の人物が関与するという点で、反乱罪と区別される。刑法第18条2384項は「二人またはそれ以上の人物が、合衆国政府を力で転覆、制圧、破壊し、政府に戦争をけしかけ、力で政府権限に反抗し、力で合衆国法の執行を妨害、遅滞させ、力で合衆国の財産を確保、掌握することを目的とした陰謀を働いた場合、刑事罰を科せられる」と規定している。

 この点、議会調査委員会は、これまでの調査で、トランプ氏とその側近たちが一体となって選挙結果転覆のための包括的計画を練り上げていた強力な証拠を提示している。

 とくに事件発生に先立つ20年12月18日、大統領はシドニー・パウエル弁護士、マイケル・フリン元大統領補佐官、実業家パトリック・バーンズ氏らとホワイトハウス内で内輪の会合を持ち、大統領選の開票で接戦となったいくつかの州を対象として、連邦軍に出動命令を出し投票マシンを没収させ、選挙結果を改変するという非常手段について真剣に協議した。国防総省当局では一時、この命令について検討したが、もし、指示通りに行動を起こしていたら、軍隊の指揮系統を混乱に陥れるだけでなく、劇的な国家安全保障上の危機を招き、軍隊による政府転覆という最悪の事態につながった可能性がある。

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