ここでいう、「経営コンセプト」とは、組織運営のやり方そのものを指す。人と人が協働するための脳内プログラミングだと考えてもよい。「朝は必ず社員全員でミーティングする」とか「営業のときは最初の10分は必ず雑談をする」などといったノウハウから、トヨタ生産方式のように1つの思考体系になっているものまで、さまざまあり得る。
貧弱な学校体育館から世界一の
技術を創出した体操日本
経営コンセプト間競争において、「体操日本」の事例は示唆に富む。日本は、2022年現在、体操競技のオリンピックメダル累計103個(金33、銀34、銅36)であり、特に1960年から20年間は主要な国際大会で負け無しの体操王国であった。56年にオリンピック金メダルを獲得しこの伝統の嚆矢となった小野喬(メルボルン、ローマ、東京オリンピックで5つの金メダルを獲得)は、大柄で力強い海外の選手に対して、小柄で俊敏な日本人の特性を生かした演技に活路を見出した。
さらに、旧ソ連などが国家を挙げて体操施設を設立して選手を育成したのに対し、日本のオリンピック選手たちは貧弱な大学の体育施設で練習を行った。それがむしろ大学施設における同輩・先輩・後輩間の技能伝承を助けた。体操世界一の技は、豪華な国家施設ではなく、設備の整わない学校体育館の中からでも着実に育まれていたのだ。
体操日本は96年のアトランタオリンピックで惨敗するが、体操日本の強みを伸ばすために、所属を超えて選手たちが集まる合宿の回数が増やされ、同輩・先輩・後輩間の技能伝承が強化された。それからの体操日本の復活と活躍は衆目の一致するところである。
このように、貧弱な設備の現場にも、世界一のノウハウが存在しうる。ならば、現在世界第3位の経済大国日本の経営現場であればなおさらであろう。大事なのは、経営コンセプトにおいて、「何を育て、何を外から取り入れるのか」を見極めることだ。
Japan as No.1
をもたらした経営の本質は何か
それでは、「Japan as No.1」時代における日本企業の強みとは何だったのだろうか?
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