原発3基を維持するドイツ
この冬の電力不足に備え、ドイツ緑の党出身のハーベック経済・気候保護相は、稼働中の3基の原発を今年末に停止する脱原発計画を中止し、南部の2基の原発を来年4月15日まで利用可能な状態にすることを9月下旬に発表した。
脱原発が党是の緑の党にとっては苦渋の決断だったが、連立内閣に参加する自由民主党のリントナー財務相は、3基すべてを2023年春以降も運転すべきと主張した。
一方、緑の党は10月14日に会議を行い、脱原発、脱炭素の方針に変わりはないと確認した上で、南部の2基の4月15日までの運転延長を認めるが、北部の1基の運転延長に必要な核燃料の購入を認めない姿勢を明らかにした。
社会民主党出身のショルツ首相を含め3党首脳が、緑の党の会議後の週末協議を行ったが、結論には至らなかった。結局、ショルツ首相は首相令を10月17日に発令し、3基の原発を来年4月15日まで利用することを関係閣僚に命じた。財務相からは決断を歓迎するとのコメントが出されたが、緑の党の閣僚からはコメントは出ていない。
脱炭素の流れが中断し、化石燃料への需要は高まっているが、緑の党の主張にあるように、中長期には脱炭素、脱化石燃料の動きは続くと機関投資家と金融機関は考えている。しかし、そうではないと、ウォーレン・バフェット氏は考えている。
バフェットが視線を送る中長期投資先とは
バフェット氏は、フォーブスによると世界6位の資産家。総資産額は985億ドル(15兆円)。彼は会長兼最高経営責任者(CEO)を務めるバークシャー・ハサウェイ社(BH)を通し投資を行っている。
BHも時価総額6250億ドル(約94兆円)、世界第7位の超巨大企業だ。彼が投資の神様とも呼ばれるのは、BHの株価の推移に現れている。
BHの2021年の年次報告書によると、1965年にBH株を購入した投資家が今も保有していると、2021年末時点で3万6416倍になっている。年平均成長率は20.1%。7年保有すれば4倍になる計算だ。
一方、米国を代表する企業500社の加重平均株価指数S&P500のこの間の推移は、配当を含めても、302倍。年平均成長率10.5%。7年保有して約2倍になる計算だ。
BHの主要な事業は、祖業でもある保険事業に加えバークシャー・ハサウェイ・エナジー(BHE)によるパイプライン・電力などのエネルギー事業とバーリントンノーザン・サンタフェ鉄道(BNSF)による輸送事業だ。
BHEのエネルギー事業の保有資産額は1320億ドル(約20兆円)。米国の天然ガス消費量の15%を輸送する2万1300マイルのパイプライン、LNG輸出基地、3427万キロワット(kW)の発電設備を持つ電力事業が主体だ。
電力事業の年間発電量1200億kW時のうち33%は石炭、32%は天然ガス火力に依っている。BNSFの年間5億3500万トンの輸送量の主要品目は石炭だ。
BHは投資用株式も保有し配当などによる収益も挙げている。2021年末現在の保有株式は多岐に亙っている。主要株式の購入時と現在の評価額の比較は表の通りだ。中国の電気自動車メーカBYD、あるいは日本の総合商社の株式も保有している。バフェット氏の株式投資戦略は長期保有にあるとされている。