2023年1月30日(月)

唐鎌大輔の経済情勢を読む視点

2022年10月26日

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唐鎌大輔 (からかま・だいすけ)

みずほ銀行 チーフマーケット・エコノミスト

2004年慶應義塾大学卒業後、日本貿易振興機構(JETRO)入構。日本経済研究センター、欧州委員会経済金融総局を経て、08年10月からみずほコーポレート銀行(現・みずほ銀行)。著書に『ECB 欧州中央銀行:組織、戦略から銀行監督まで』(2017年、東洋経済新報社)など。(記事はあくまで個人的見解であり、所属組織とは無関係です)

 実際、2013年以降、アベノミクスに沸いた日本経済において製造業の稼働率は殆ど横ばいだった(図表③)。著しい人口減少を経験する日本において「横ばい」は前向きな評価になるかもしれないが、円安効果をふんだんに活かし、稼働率を高めるにはやはり人口が必要である。

「円安+経済安全保障」で考える必要?

 もっとも、採算度外視で日本の生産能力を増強しようという潮流が勢いづく可能性はある。それは経済安全保障の論点ゆえである。上記の時事通信の記事中にも指摘されるように、パンデミックや米中貿易摩擦で断続的にサプライチェーンが寸断された近年の経験を踏まえれば、コストの問題は脇に置いても国内で製造した方が安全という考え方はあり得る。

 経済安全保障の観点ならばある程度公的補助ありきで中小企業も動けるケースが出てくるかもしれない。「円安+経済安全保障」まで包括的に考えた時に、製造業の国内回帰の可能性は完全に否定されるものではない。

 もっとも、上述してきたように、経営上の効率性を考えた上で海外へ打って出たはずであって、採算度外視で国内回帰を進めるにも限界はあるだろう。上では言及を避けたが、円高や人口減以外にも、地震や台風といった自然災害を回避するための海外生産移管という側面も相当あったはずであり国内回帰でサプライチェーンの脆弱性が増すという側面も相当にありそうである。

 「安い日本」を背景として再び貿易黒字立国に戻るという展開は机上で想像されるほど簡単な話ではない。

 
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