図1は需要と供給の曲線である。青色が供給曲線で、オレンジ色が需要曲線である。これに全国旅行支援という8000円の補助金が付けば、黄色の曲線のように需要曲線が上方にシフトする。
お客にはいままでと同じ料金で泊まれるが、ホテルにとってはにわかに需要が増えたという状況である。需要・供給曲線の形によっていくら上がるかは異なるが、旅行支援が価格を上げることは間違いない。
また、現在は、図2のように、供給曲線の傾きが急になっている可能性が高い。傾きが急になれば、図1と図2を比べて明らかなように、料金はさらに上がる。
なぜ傾きが急になっているかと言えば、このところの人手不足である。コロナ不況からの回復も弱い中で人手不足になっているのには、3つの要因があるだろう。
第1は雇用調整助成金などで労働しなくても所得が得られるので仕事を選んでいること、第2は技能実習生がコロナの影響で減少していること、第3は円安で日本の賃金が外国人にとって低下しているため日本で働く外国人が減少していることである。ただし、これらは筆者の推測に過ぎないので、今後の分析が必要である。
低賃金労働者が減れば、ホテルは賃金を上げて人を集めるしかない。賃金上昇はホテル料金に転嫁するより仕方がない。
宿泊施設のダイナミック・プライシング
ホテル料金が上昇するには、近年になってのホテル側の価格戦略の変化もある。過去には、ホテル料金は繁忙期の価格を前提として、閑散期にはそれより数割下げるという価格戦略を取っていた。それも、継続的に利用してくれる法人への割引、旅行代理店への割引販売のような目立たない割引をしているだけだった。
需要によって価格を変化させるのは合理的ではあるが、やり過ぎればお客の反発を招いて長期的にはうまくいかないと考えていたのだろう。ところが需要の繁閑によって料金を変化させるダイナミック・プライシングがホテル経営に遠慮なく導入されるようになった。