多くのサプライズののちに閉幕した中国の共産党大会における習近平総書記・国家主席の「一人勝ち」は、台湾にとりわけ大きなショックを与えた。習近平の次の目標は、台湾の統一にほかならない――。習近平氏が率いる新指導部の顔ぶれの「台湾シフト」があまりに明確であったため、台湾には「開戦不可避」の予感が漂った。
台湾統一は「在任中に実現したい」問題に
習近平は党大会初日の活動報告で「台湾への武力行使の放棄は約束しない」と表明。前回の党大会の活動報告ではなかった発言であった。会場では5秒に渡って拍手が鳴り響いた。ほかの場面の儀礼的な拍手に比べて、明らかにトーンの高いものだった。
「放棄しない」と言い切った習近平の表情も心なしか高揚していたように見える。そして、党大会の終盤、党の憲法にあたる党規約(党章)に「徹底して台湾独立に反対し、阻止する」と書き込まれている。
問題は、誰がどのように「台湾独立」を策謀していると判断するのか。その解釈権は台湾になく、中国にあるということだ。今年8月のペロシ訪台についても、本来であればペロシ議長が望んだ訪台だったわけなので、台湾をあのような大規模な軍事演習で脅すのは明らかに不条理だ。しかし、「台湾が挑発している」という解釈を中国は自ら決定し、譲ろうとはしない。その思考方法は、香港でわずかな民主を求める人々の声を「暴動」と決めつけたことを想起させる。
福建省で17年間の勤務経験を有する習近平には、台湾問題に自分が歴代の指導者で最も詳しいという自負心があるとされる。そして、自らが掲げた「中国の夢」と「偉大なる中華民族の復興」という二大目標は、「台湾解放」抜きには実現しない、ということをすでに明言している。台湾問題の解決は、胡錦濤時代までは「いつか実現したい核心的利益」としての課題だったが、習近平時代になって「自分の在任中に実現したい核心的利益」の課題に変わった。