旧ソ連構成国モルドバ大統領選の決選投票で、親欧米派で現職のサンドゥ大統領が親ロシア派の社会党の支持を受ける元検事総長ストヤノグロ氏を破り、再選した。今後、欧州連合(EU)加盟に向けて欧米との協力を一段と進める考えだが、来年に控える議会選を前に、親ロシア派との対立が激しくなる可能性もある。
ロシアの「次の標的」とも言われるモルドバは、どのような国で、ウクライナ侵攻後から国内情勢はどのようになっているのか。2024年5月28日に掲載した「【現地ルポ】ウクライナの次はモルドバ?平和に見えても、所々に潜む亀裂、現地から見た小国モルドバの“今”」を再掲する。
ロシアの「次の標的」とも言われるモルドバは、どのような国で、ウクライナ侵攻後から国内情勢はどのようになっているのか。2024年5月28日に掲載した「【現地ルポ】ウクライナの次はモルドバ?平和に見えても、所々に潜む亀裂、現地から見た小国モルドバの“今”」を再掲する。
ロシアによるウクライナへの全面軍事侵攻開始から間もない2022年4月、General SVRという有名なテレグラムチャンネルが、聞き捨てならない情報を流した。ロシア安全保障会議の席でゲラシモフ参謀総長が、ウクライナ南部に加え、モルドバ全域を占領することを提案したというのである。
その際にゲラシモフは、「モルドバは、ウクライナのような抵抗は絶対にしないので、良いオマケになる」と発言したとされた。ただし、プーチン大統領はこの提案を原則的に受け入れつつも、ドンバス全域の制圧を優先するよう指示したということだった。
実のところ、General SVRは平素から怪情報の類を流しており、くだんのモルドバについての投稿も、真偽不明である。それでも、プーチン政権がウクライナの「オマケ」としてモルドバを見ているというのが、いかにもありそうな話であることも否めなかった。
同じ22年4月には、モルドバのサンドゥ大統領が、「わが国は、侵攻を受けた場合に、持ち堪えられるだけの軍隊を持っていない」と、どうにも頼りない発言したと伝えられた。
こうしたいきさつから、個人的にもこの2年間というもの、モルドバのことが非常に気がかりだった。ようやく念願が叶い、筆者は4月に1週間ほどモルドバに滞在して現地調査を実施する機会に恵まれた。
今までモヤに覆われてぼんやりとしか理解できていなかったことが、だいぶ見えてきた気がする。モルドバは小国とはいえ、東欧の国際秩序の行方を左右する試金石となるので、今回は現地での見聞を交えながら、モルドバの最新事情について報告してみたい。