2024年7月16日(火)

バイデンのアメリカ

2022年11月18日

・州務長官選挙=州務長官は各州における大統領選挙において、開票結果の最終認証権限を持つ。24年大統領選挙が前回選挙同様に接戦となった場合、州務長官の判断次第で勝敗が左右されかねない。そこで、出馬表明したトランプ氏は、有利な選挙結果を導き出すために、激戦が予想されるアリゾナ、ネバダ、ミシガン、ミネソタ各州で事前に極右候補を推薦していたが、期待に反し、いずれの候補も敗退した。

 上記のような結果は、大統領選で当選を果たした16年当時と比べ、トランプ氏の新鮮味と威勢が明らかにピークを過ぎたことを示している。言い換えれば、〝賞味期限切れ〟を迎えつつあるのだ。

 そのせいか、15日の出馬表明も、事前に「非常に大きな発表を行う」と大風呂敷を広げて予告した割には、珍しく自信と精彩を欠く地味なものだった。

保守派も愛想をつかす言動

 こうした中で、次期大統領選に向けてきわめて注目されるのが、保守系各メディアの「トランプ離れ」だろう。 

 まず、全米の財界、経済界に大きな影響力を誇る「Wall Street Journal」が選挙投開票翌日の去る9日、「トランプが共和党最大敗北者 Trump is the Republican Party’s Biggest Loser」との見出しで始まる以下のような同紙論説委員会による社説を掲げた:

 「民主党はまたもや、トランプ前大統領を選挙戦の最大争点に掲げ、成功した。そして彼自身がそれを助けた。トランプ主義の候補者たちは、明らかに勝てたはずの各州で敗退した。しかし、これらの敗北はおそらく、次回大統領選の24年に向けて、共和党が耳を貸すべき苦い教訓かもしれない」

 「その最たる例が上院選であり、とくに、ニューハンプシャー州においては、トランプ氏が後押ししたドン・ボルダック候補が現職のマギー・ハッサン民主党候補に得票率53%対45%の大差で敗れた。同時に州知事選では、トランプ氏の推薦を受けなかった現職のクリス・スヌヌ知事が16ポイントの差をつけて再選を果たした。

 同様に、アリゾナ、ペンシルベニア州の上院選でも、トランプ氏の主張を真に受け、20年大統領選挙結果を否定してきた候補が敗れた。ジョージア州では、トランプ氏の推すハーシェル・ウォーカー候補と民主党現職のラファエル・ウォーノック候補との決着がつかず、来月の決戦投票結果次第となった。ところが、同州の州知事選では、同じ共和党ながらアンチ・トランプ論客のブライアン・ケンプ現職候補が8ポイント差で再選を果たしたのである」

 「そもそも、トランプ氏は16年選挙において、不人気だったヒラリー・クリントン候補を相手に本来あり得ない勝利を果たして以来、選挙における〝模範的敗北記録〟を保持してきた。18年中間選挙では、低い大統領支持率のおかげで共和党は打撃をこうむり、20年大統領選で敗北、21年のジョージア州における上院選の決戦投票の際には、彼が自分の言いなりにならなかった同州共和党指導部を厳しく非難した結果、民主党に敗北、上院多数支配の原因を作った。

 そして今回の中間選挙で、共和党の上院での敗北を招いた。彼は、『もう飽き飽きするほどの勝利を収める』と豪語してきたが、おそらく共和党は、いやになるほどの敗北を喫したのである」

 伝統的共和党路線の中でもとくに保守本流の雑誌として知られる「National Review」誌も同日、「トランプ共和党体制破綻」と題する論評を掲載、「共和党は中間選挙でひどく落胆させる結果となり、党の頂点に立ってきたトランプ時代はもはや、同党にとって災害以外の何物でもなくなってきた」「まさにトランプは、立ち去るときが来た」「彼は以前、ジョージア州でブライアン・ケンプ氏を州知事の座から引きずり下ろし、フロリダ州では自分がライバル視するロン・デサンティス現職知事を酷評し続けてきた」「彼は敗者であり、破綻者にほかならない」などと舌鋒鋭い非難を浴びせている。


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