2024年4月19日(金)

バイデンのアメリカ

2022年11月18日

 同じく保守系タブロイド日刊紙「New York Post」は1面全面にトランプ氏の風刺画とともに「TRUMPTY DUMPTY」という大見出しを掲げて批判した。英国の童話に出てくる擬人化された〝卵男〟「HUMPTY DUMPTY」をもじり「1度塀から落ち壊れてしまったら元どおりにならない」との意味をこめたもので、さらに小見出しでは「Don(トランプのファーストネーム)は、落下したが、共和党の連中は党を立て直せるのか?」と辛辣に問いかけている。

 また、16年大統領選当時から、トランプ氏を終始一貫して支持してきた「Fox News」テレビでも、中間選挙結果を踏まえ、社外コメンテーターの中に、トランプ氏の責任を問う声や、同氏に代わり、若手ホープ、デサンティス氏らへの世代交代を呼びかける動きも出始めている。

熱烈支持者と「ネバー・トランパー」とのせめぎ合い

 実際、トランプ氏の存在についてはこれまで、実績以上に過大評価されてきた。

 16年、トランプ大統領が就任して以来、共和党は上院、下院でそれぞれ多数体制を民主党に奪われ、20年大統領選では再選果たせず、敗退した。また、本人が当選を果たした16年大統領選そのものについても、当時、一部評論家の間で「ロシアによる選挙介入、大規模な資金援助抜きには論じられない」との指摘があったほか、全米有権者得票総数では、280万票もの差でヒラリー・クリントン民主党候補の後塵を拝した。

 今回の中間選挙についても、前評判では、両院ともに、野党共和党が多数支配を奪回、「地滑り的勝利」のはずだったが、ふたを開けてみると予想以上に民主党が善戦した。ある意味では、トランプ氏の影をひきずったままの共和党は〝敗北〟に近い結果に終わったともいえる。

 そしてその責任の大半は、①前回大統領選の結果を否認し続け、多くの国民の間で不評を買ってきた、②史上最悪の連邦議会乱入事件を引き起こした、③連邦、州検察当局による多岐にわたる不正疑惑捜査が待ち構えている――などの「トランプ・ファクター」によるところが大きい。

 もちろん、これまで南部や中西部の農村部、工鉱業地帯に広がる熱烈なトランプ支持層が、今後急激に縮小するわけではない。

 その一方で、全米の共和党員の中で、極端なトランプ主義をけっして容認しない「ネバー・トランパー Never Trumpers」と呼ばれる反対派が全体の10~15%を占めるといわれている。

 今回の中間選挙結果は、「ネバー・トランパー」たちの存在をさらに後押しすることは確実視されており、トランプ氏にとっては、24年大統領選の本選はもちろん、共和党予備選段階から、前回以上に厳しい選挙戦を強いられることになる。

   
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