2024年4月20日(土)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2022年11月28日

 下院で共和党が多数となり、選挙で増えたMAGA 派は、政策よりバイデン氏の子息や司法省などの取り調べを優先し、大統領弾劾も検討するかもしれない。さらに、債務上限引き上げや予算案に合意せず、連邦政府閉鎖を人質にとり譲歩を引き出そうとするだろう。

 共和党は、社会保障の削減、インフレ抑制法の一部(温暖化対策や処方箋医薬品の価格引き下げ、大企業増税)を覆すのを狙っている。ただ、MAGA派の試みは簡単には実現しないだろう。

 社会保障の削減を試み、インフレ抑制法の施行を妨害することで処方箋の価格引き下げが実現しなければ、共和党への反発を招く可能性は高い。また、インフレ抑制法は、規制部分はなく潤沢な予算を企業や個人に振りまく政策である。

 温暖化対策の一部として EV製造や充電設備配備など企業や労働者への恩恵は大きい。米国企業にとって政策の変更を望む理由はなく、共和党が強硬に反対することは難しいだろう。

依然として残るトランプの影響力

 今回の一番の敗者はトランプ氏だが、今後も影響力は残るだろう。トランプ氏を支援してきた評論家やメディア、共和党議員の中からも選挙結果へのトランプ氏の責任を問う声がでている。

 しかし、MAGA派からのトランプ支持は相変わらず高い。白人人口が減少傾向にあり、教育レベルやスキルも低い白人が怒りや不満を抱え、自分たちこそ差別された被害者と思う状況は変わらず、トランプ氏は今後も「取り残された人々」を利用するだろう。

 バイデン氏は、民主党の大健闘もあり、2024年再出馬の意欲を感じさせるが、再出馬を望む有権者の割合は低い。再びトランプ対バイデンとなればバイデン氏が有利とされるが、デ・サンティスのような人物が共和党候補となる可能性もあり、民主党は別の候補を探し、また「取り残された人々」の支持を得る戦略が求められる。

   
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